もう迷わない!寸法公差への影響が少ないメッキ・表面処理7選
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メッキをはじめとした表面処理には防食、防錆、離型性の向上 など、さまざまな役割があります。
表面処理は金属やプラスチックなどの見た目を整えたり、機能性を上げたりと便利な技術ですが、一方で製品の寸法に影響を与えるため、厳しい精度が求められる場合には処理方法に困ることもあるでしょう。
こちらの記事では、寸法への影響が少ないメッキ3種と酸化被膜・化成皮膜系の表面処理4種について解説します。
三和鍍金ではステンレス、アルミ、銅などさまざまな金属への表面処理を取り扱っています。
YouTubeチャンネルで24種の表面処理を一挙解説した動画もありますので、こちらもあわせてご覧ください。
【24種一挙公開!】めっき、塗装、表面処理を紹介 – YouTube
目次
寸法精度・公差への影響が少ないメッキ・表面処理とは
メッキは処理方法によっていくつかの種類に分かれます。
メッキの中でも、膜の厚さが均一でムラが少なく、寸法公差・精度への影響が少ないのが「無電解メッキ」と呼ばれるものです。
電気メッキでは、電気が強く当たる部分と弱く当たる部分があるため、電気の強弱によってメッキの厚さが変化し、厚みにバラツキが生じます。
一方、無電解メッキは電気を使わず、水溶液中での化学反応によってメッキをつけます。そのため膜の厚さは均一になり、複雑な形への対応も可能です。
しかしメッキの析出に時間がかかる、電気メッキに比べてコストが高くなるというデメリットもあります。
メッキ以外の表面処理では、黒染めや不動態化処理といった酸化被膜や化成皮膜をつける方法も、薄く均一な皮膜をつけられる処理となっています。
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寸法精度・公差への影響が少ないメッキ3選
寸法公差への影響を抑えるには、膜厚を細かくコントロールする必要があります。
以下では、薄く均一に成膜可能な3種類のメッキについて解説します。
無電解ニッケルメッキ
無電解ニッケルメッキとは、電気を使わずに化学反応によってニッケルのメッキ皮膜を析出させる方法です。
無電解ニッケルメッキにはいくつかの種類がありますが、ニッケルとリンの合金を指して「無電解ニッケルメッキ」と呼ぶことが多くなっています。
またリンの濃度によって、低リン・中リン・高リンと3つのタイプがあり、濃度が高くなるほどピンホールが生じにくいことが特徴です。
無電解メッキでは電気メッキよりも綿密な脱脂の処理が必要となりますが、膜厚の微細なコントロールが可能で、寸法精度が厳しい製品に向いています。
ただしメッキ液の寿命が短く、メッキ液と還元剤のコストがネックです。
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低温黒クロムメッキ
低温黒クロムメッキは、金属クロム・三価クロム化合物と樹脂をかけ合わせた皮膜を形成する電気メッキのことです。
一般的な黒クロムメッキでは、処理液の温度は50度ほどです。一方、低温黒クロムメッキでは-10から-25度の低温度帯で処理を行います。
低温黒クロムメッキのメリットは、セラミックやテフロンを染み込ませることで、耐摩耗性や耐食性といった樹脂の機能が付与される点にあります。電気メッキでありながら、均一に成膜できることも特徴のひとつです。
仕上がりは艶消しの黒になり、分光反射率は1.5%以下となるため、低反射が求められる製品に向いています。
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低温黒クロムメッキについてはYouTubeでも解説しています。
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PVDコーティング
PVD(物理蒸着)コーティングとは、真空状態の装置の中でメッキを成膜する表面処理のことです。スパッタリング、真空蒸着、イオンプレーティングの3種類があります。
真空状態でクロムやチタン、アルミなどの金属を蒸着させて皮膜をつけるため、通電性のない樹脂も加工可能です。
PVDコーティングは、密着性が高く、耐腐食性を持つことが特徴です。
1000度以上の高熱で処理を施すCVD(化学蒸着)とは異なり、200~500度程度の温度で処理を行うため、処理中に素材がゆがむ心配がないことがメリットです。
PVDの技術は汎用性が高く、さまざまな分野で用いられています。自動車などの機械部品から蛇口や取っ手といった住関連の備品、スナック菓子やコーンフレークの袋の内側のアルミ加工はその一部です。
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寸法・公差への影響が少ない表面処理4選
寸法公差への影響が少ない表面処理の方法は、メッキのほかに酸化被膜・化成皮膜をつける方法もあります。
以下では4つの表面処理方法について解説します。
不動態化処理
不動態化処理とは、ステンレスに皮膜を付けることで耐食性を上げる表面処理の種類です。
パシベート処理やパシベーション処理とも呼ばれます。
ステンレスに含まれるクロムと酸素を結合させると、クロムリッチという皮膜が形成されます。
もともとステンレスはサビに強い性質を持ちますが、切削加工や溶接によって皮膜がなくなると、耐食性が失われてしまいます。
そのため、加工後に不動態化処理を行うことで皮膜を形成しなおす必要があるのです。
不動態化処理を行うにはクロムの含有量が10.5%以上であることが目安となっており、オーステナイト系ステンレスであれば問題なく皮膜が析出できます。ただし、マルテンサイト系やフェライト系では処理が難しくなります。
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不動態化処理についてはYouTubeでも解説しています。
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黒染め
黒染めは、アルカリ水溶液に金属を浸して四三酸化鉄被膜を形成する表面処理のことです。
苛性ソーダを主成分とする水溶液に素材を入れ、加熱することで皮膜がつきます。
黒染めと呼びますが、染めるのではなく黒サビをつけることで黒く色がついたように見える処理方法です。また皮膜は薄いため、素地の質感を残した仕上がりになります。
黒染めを施すだけでも、サビに強くなりますが、さらに防錆油で仕上げることでより耐性が上がります。
ただし膜厚が薄いため、屋外での使用には適していません。
素材は鉄に施すのが一般的ですが、ステンレスにも対応可能です。
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酸化発色
酸化発色とは、ステンレスの酸化皮膜の厚みをコントロールすることで赤、青、黄色など鮮やかな発色を可能とする表面処理です。
塗装やメッキと違い、上から塗料や金属を塗布しないため、金属の光沢感をそのままにしたカラーリングが可能で、剥離する心配がありません。
また酸化被膜を形成することから、耐食性が上がる、ステンレスのみで有害物質を含まないため人体に優しい、などのメリットもあります。
そのため医療機器や食品製造などの現場で異物混入を避けるために使用されることがあります。
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アロジン処理
アロジン処理とは、アルミニウムにクロメート処理を行うことです。
処理液にはリン酸、クロム酸、重クロム酸が含まれます。使用する液の主成分によって処理後の色味が異なり、リン酸の場合は緑、クロム酸では金色になることが特徴です。
アロジン処理と似た表面処理にアルマイト処理がありますが、形成される皮膜の種類や伝導性の有無で違いが生じます。
またアロジン処理では、防錆性が上がる、伝導性が保たれる、塗装の密着性が向上するといったメリットがあります。
本来のアロジンは6価クロムを利用しますが、海外に輸出する製品はRoHS指令対応の3価クロムを使用した処理液で対応します。
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アロジン処理についてはYouTubeでも解説しています。
【アロジンって何?】気になる疑問を解説!! – YouTube
【まとめ】メッキの相談は三和鍍金まで
寸法公差への影響が少ない表面処理の種類
- ●無電解ニッケルメッキ
- ●低温黒クロムメッキ
- ●PVDコーティング
- ●不動態化処理
- ●黒染め
- ●酸化発色
- ●アロジン処理
表面処理は種類によって皮膜の厚みや機能性に差があります。
当社では製品の用途や予算に合わせたさまざまご提案を行っておりますので、ぜひ一度お問い合わせフォームよりご連絡下さい。
三和鍍金では、各種メッキをはじめ酸化被膜・化成皮膜処理に対応しています。
対応可能な表面処理については以下のページでご覧いただけます。
執筆者プロフィール
- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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