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columnメッキライブラリ

2022.03.02

【高騰】リンって何?

こんにちは。

群馬県高崎市にて表面処理を行なっております、(株)三和鍍金と申します。

本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。

さて、みなさん、昨今様々なものの値上げラッシュが我々の生活に影響を及ぼしていますね。

食料品や日用品をはじめとして、ガソリンや電気代など多種多様です。

こと我々の業界でいえば、各種原材料の高騰が問題となっています。

特に今回のテーマである「リン」は、著しく単価が上がってしまっています。

そもそもリンとは何なのでしょうか。

また、価格高騰の原因はどこにあるのでしょうか。

※昨今の値上げについてYouTubeで動画を公開しています。

こちらも併せてご参照ください。

リンとは

リンとは主にリン鉱石から採れる物質で、産業に寄与しているだけでなく、実は我々の身体の中にも存在している重要なものです。

何かの動作を行うとき、もちろん筋肉が動くことで力を生み出しその動作を行うことができますが、その筋肉を動かすために必要なATP(アデノシン三リン酸)という物質はリンの化合物です。

ATPやアデノシン三リン酸については高校生の生物の授業で聞いたことのある方もいらっしゃるのではないのかなと思います。

そんなリンは、用途によって様々な形に姿を変えます。

リンの元になるものはリン鉱石と呼ばれ、姿を変えたリンのことはリン鉱石誘導品と呼ばれます。

リン鉱石誘導品の詳細は割愛しますが、肥料に使われたり、我々の業界では塗料の下地成分になったりと、様々な業界において重要な物質なのです。

ちなみに、工業においてのリン使用量は全体の5%ほどで、残りの多くは農業方面に使われているようです。

リンの高騰はなぜ起きた?

では、なぜそんなリンの価格高騰はどのような原因で起きたのでしょうか。

ここでカギを握るのはアジアの大国、中国です。 

まず、日本のリンは全量輸入と言われています。

日本ではリン鉱石はほぼ採れないと言っても過言ではありません。

輸入ということは、海外との貿易によって資源の調達を行うので、価格をはじめとする様々な要素が相手国の事情に左右されてしまいます。

その前提の上、日本のリン輸入国トップはどこなのかというと、そう、中国なのです。

つまり、今回のリン原料の価格高騰は中国の内情によるものと言えます

どんな事情があるのでしょうか。

中国の内情

ご存じの方も多いかもしれませんが、近年中国は、「双炭対策」という環境保護政策を進めています。

CO2排出量を2030年までに上昇から下降に転じさせる「カーボンピークアウト」と、2060年までにCO2排出量を差し引きゼロにする 「カーボンニュートラル」という政策です。

二酸化炭素の排出量を減らすというのはどういうことなのでしょうか。

モノ(有機物)を燃やすと二酸化炭素が排出されますよね(もちろんそれだけではありませんが)。

したがって、あまりモノを燃やさないようにしようという結論に至ります。

モノ(石炭)を燃やして電気を得る火力発電は中国において大きなシェアを占め、世界的に見ても中国の火力発電は非常に大きいものです。

つまり、中国政府としては「二酸化炭素が出るから石炭を使ってあまり発電するな!」ということになりますよね。

中国政府は上記の論理から国内炭鉱の稼働を停止させました。

さらに、外交上の理由で石炭の輸入も大幅に減ったため、使用できる電力がかなり減ってしまったのです。

電力制限とリン

電力制限の仕組みは上で説明しましたが、ではリンの話とどう繋がってくるのでしょうか。

今回のリン価格高騰で特にフォーカスされている「黄リン」という物質は、製造の過程で電気炉という炉に入れ処理されます。

1500℃という高温で処理を行うという話ですから、相当の電力消費があることは明らかです。

電気を使いたくない中国政府としては、減産しろ!ということになるわけですね。

実際、黄リンは地域によって90%の減産が通告されました。

リンの自国優先と輸出減

リンは肥料として多く使われると先ほど書きましたが、つまりリンが滞ることは食糧問題につながる危険性があります。

通常時でさえ中国を悩ませている食糧問題ですので、中国は素早く自国優先の処置をとりました。

すると、ただでさえ生産が少なくなっているリンの輸出量は激減しています。

輸出量が激減するということはニーズと乖離が出てしまうということ。

つまりはリン価格の高騰となるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

簡単にまとめてみますと、中国政府の考えとしては

環境政策でCO2 を減らしたい!→石炭で発電するな!→ 電力が足りないからたくさん電気を使うリンの生産を減らせ!→ 国民が多いし食べるものが無くなると困るから、少ないリンは国内で肥料として使え!

という感じですかね。

その結果輸出量が減り、しかし需要が減ったわけではないため、リンの単価は高騰してしまったというわけです。

弊社の取り扱っている薬品も、中には1.7倍の仕入れ値になってしまったものもあり非常に苦しい状況ではありますが、できるだけ良いものをお安くご提供できるように社員一同これからも努めてまいります。

それではまた次回!

PROFILE

柳沢 寛太
柳沢 寛太
新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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