【基礎中の基礎!】銅メッキについて
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※2023年9月19日に加筆修正いたしました。
群馬県高崎市にある(株)三和鍍金の武藤です。
今回は【基礎中の基礎】銅メッキについてということで
銅メッキの基本的な性質や用途、種類、外観について解説していきます。
弊社では銅メッキ処理を行っていますのでお気軽にお問い合わせください。
銅メッキについて知ってる人はおさらいを。知らない人は是非!
最後までご覧になってください。
銅メッキについてはこちらの動画もご覧ください。
目次
銅メッキとは
銅メッキは、銅を溶かし込んだメッキ浴に被メッキ物を入れ電気を使い銅メッキ皮膜を被メッキ物に被覆させるものです。
下地めっきから機能メッキまで幅広い用途に用いられる重要なメッキです。
外観の色合いは赤褐色と言えばいいのでしょうか。銅色と言えば皆さん何となくイメージは出来ると思います。
非常にきれいな外観をしています。
銅メッキは何種類かある!?
意外と知られていないのですが表面処理(めっき)の業界には様々な分類が存在します。
銅メッキも同じで大きなくくりは「銅メッキ」ですが細分化すると種類が実はあるのです。
酸性からアルカリ性の様々なPH(ペーハ-)の銅メッキ浴があり、素材に合わせてメッキ浴の選定を行います。
ここで銅メッキの種類をいくつか見てみましょう。
1.硫酸銅浴
硫酸銅浴の特徴として酸系のメッキ浴なので腐食性が高く、鉄生地には銅が置換析出するので、直接メッキが出来ない、均一電着性がシアン化銅浴には及ばない等のデメリットが挙げられます。
メリットとしては良質な物性を有し、メッキ浴中でも最もレベリング性が高く最高グレードの光沢が出ます。電流効率が良くメッキが短時間でつく、良質なメッキ皮膜となる為、電気特性が問題視されることがほとんどないと言われております。
2.シアン化銅浴(青化銅浴)
シアン化銅浴は作業環境や公害の面からは好ましくないにもかかわらず他の銅メッキには無い長所をたくさん持ちあわせています。酸性浴と比較して高い過電圧のもとでメッキされるため緻密なメッキ層が得られ、均一電着性に優れています。
複雑形状の品物の内側の部分や、ピンホール等などの素材欠陥の内部までもめっきが良く付きまわる為、多種のめっきに先立って素材に施されるストライクとしても広く利用されています。
更に、素材表面についた油などの汚れを洗浄しその表面を電気化学的に活性化学的に活性化する作用を持つため、前処理不足を補う効果もあります。
環境規制の面から脱シアンも取り上げられていますが代替えとしてもシアン化銅浴に比べると性能が劣ります。まさに諸刃の剣といったところでしょうか。
3.ピロリン酸銅浴
ピロリン酸銅浴は優れたレベリング性、均一電着性、並びに低毒性であるといえます。
加水分解する性質を持っている為、その特性を十分理解した上で管理しないと浴の寿命を短くし、メッキ不良の原因になりやすいのです。
ピロリン酸銅浴は管理が非常に難しいのです。
銅メッキの用途
銅メッキは主に下地のメッキとして使われることが多いです。例えばニッケルメッキ、クロムメッキ前の耐食性を持たせたりしています。銅メッキは熱伝導性、電気伝導性に優れているので装飾めっきの下地めっきから、優れた電気伝導性を利用する機能めっきまで多くの用途に用いられています。
因みにパイプ等の内部は、酸性浴でめっきをして内面に液が残っているとそこから腐食してきたりしてしまいます。しっかりと液残りが無いように洗浄することを心掛けて処理を行います。
その辺を比較的気にしなくても良い為、パイプ等はシアン化銅浴をお勧めします。
このように銅めっきといっても製品に適したものがございます。
適した銅メッキが不明な時はご相談下さい。
銅メッキの性質
銅メッキの性質ですが酸性浴では硫酸銅浴、中性に近ければピロリン酸浴、アルカリ性ではシアン化銅浴となっています。
それぞれに特性があり硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴で、鉄素材にめっきをすると置換めっきが生成します。これが密着性がよくないので鉄素材に直接銅メッキをほどこすと密着不良に繋がります。
密着性からみると良好なシアン化銅浴が使われることが多いです。
光沢の面からみると硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴がお勧めです。両者に比べるとシアン化銅浴は劣ります。もちろん、薬品の光沢剤等に影響してきますが・・
このように一長一短といったそれぞれの性質があるのです。
まとめ

蛇足~メッキの歴史~
恒例の蛇足シリーズということで、今回はメッキの歴史についてお話したいと思います。
いつぞやのコラムでも同様のことを書いているかもしれませんが、あまり気にせずご覧ください。
メッキの歴史は古代メソポタミア文明から始まります。
小学校・中学校で習いましたよね、世界四大文明のひとつ、メソポタミア文明。
実はメッキの発祥はこの文明と言われており、その歴史は4000年という驚きの長さになります。
当時行われていたのは錫メッキと言われるメッキで、現代と同様に耐食性や美観向上のため用いられていました。
錫メッキについてはこちらのコラムをご覧ください。
それから時は経ち、修学旅行の定番スポット「奈良の大仏」にもメッキが行われます。
この東大寺の大仏には水銀アマルガム法と呼ばれるメッキ方式が採用され、水銀820kg、金146kgもの材料が用いられたそうです。
水銀アマルガム法はいわゆる「置換メッキ」の一種であり、当時のメッキと言えばこの置換メッキが一般的でしたが、
1800年にイタリアのボルタがボルタ電池という電池を開発したことで、ここから徐々に「電気メッキ」が浸透していきます。
そして、ついに日本でもある有名な「藩」が輩出した人物によって電気メッキが運用され始めます。
西郷隆盛や大久保利通などを輩出した九州地方の藩と言えばどこでしょうか。
…そうです。
薩摩藩です。
1855年、薩摩藩の11代目藩主「島津斉彬」は日本初の電気メッキを行いました。
そこから工業化などを経て、メッキ業界は今のような形に落ち着いたのです。
私たちが今走っているレールは、メソポタミアの文明人やボルタ、島津斉彬たちがつくりあげたレールというわけですね。
今回は【基礎中の基礎!】銅メッキについてということでご紹介させて頂きました。
めっきは非常に奥が深く今回ご紹介させて頂いた内容でもあくまで銅メッキの一部です。
詳しい内容やご不明点等ございましたらご連絡頂ければと思います。
当社でも銅メッキを処理できますので宜しくお願い致します。
因みに当社は硫酸銅メッキ、下地としてシアン化銅浴を採用しております。
執筆者プロフィール

- 代表取締役
-
株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
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