【基礎中の基礎!+α】錫メッキについて
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※2023年9月20日に加筆修正致しました。
群馬県高崎市にある(株)三和鍍金の武藤です。
今回は【基礎中の基礎+α】錫(すず)めっきについてということで
錫めっきについて解説していきます。
弊社では錫めっきの取り扱いも御座いますのでお気軽にお問い合わせください
金属である錫についてあまりなじみがない人は多いかと思います。
錫は希少で金や銀と並ぶ非常に高価な金属なのです。
金、銀は当然知っているけど錫については全然わからないという方も多いはず。
そこで今回、そんな錫を使用した錫メッキについての
基礎情報と共に性質等を解説していきます。
今回の記事をご覧になって頂けると「錫メッキ」というキーワードを聞いたときに
こういうものだと説明出来るようになるかもしれません。
それでは、行ってみましょう!!
錫メッキとは
錫メッキとは錫の金属を溶かし込んだメッキ液に
被メッキ物(めっきしたい製品)を浸漬し電気を使い錫メッキ被膜をつける処理です。
光沢については半光沢錫メッキ、光沢錫メッキと存在します。
そもそも「錫」とはどのような金属なのでしょうか。
錫は古くから使用されている金属で、
特徴としては比較的柔らかい金属であり融点が低く大気中で変色しにくい金属です。
他の金属に比べ単体では毒性が極めて低いことも特徴です。
錫が入った合金メッキも何種類もあり様々な用途に使用されています。
合金メッキについてはこちらをご覧ください。
主な使用用途としては鍋などの食品用器具やボタン、
電子部品である端子等に使われ多岐に渡って使用されているのです。
錫メッキは安価な電子部品に良く使用されますが、その際に「ウイスカ」に注意が必要になります。
この「ウイスカ」は錫メッキを説明するにあたって必要不可欠な情報ですので
分からない方はこちらをご覧になって下さい。
一方、錫メッキは多岐に渡って使用されているという話をさせて頂きましたが、
実は古いタンスや歴史がある建造物等にも錫メッキが使用されているケースも多くあります。
その色調や綺麗な外観はまさに歴史を感じさせるものには最適です。
すこし変色をしてもいい味を出すことが出来る錫メッキ。歴史があるメッキなのですね!!
![](https://sanwamekki.com/info/wp-content/uploads/2021/02/9121a40c10c7557e8283516ae2ac21ba-1024x683.jpg)
他にも摺動性(すべりやすさ)を良くしたり、はんだをする際に、はんだを付きやすくしたりと
装飾目的以外の機能的性能を備えられることも出来るのです。
身近な例で言うと綺麗で光沢が長持ちさせられるという特徴から神具や仏具に使われることも多く
殺菌効果もある為、食器やコップにも使用されるケースもございます。
錫メッキの種類
錫メッキの種類はとても多く、これまたそれぞれの特徴に合わせた錫メッキのめっき浴があります。
毎度、この話をしていると思いますが本当にめっきは奥が深いものです・・
どのめっき、表面処理も目的に応じて選定することが大事なのです。
それでは錫メッキの種類を見て行きましょう。
大きく分けて2種類あります。
1.アルカリ性錫メッキ
アルカリ性錫メッキは錫酸塩浴、ピロリン酸塩浴などが挙げられます。
PHの関係でアルカリ浴、酸性浴がめっき液にはあることは皆さんお分かりですね。
PH(ペーハー)についてはこちらの記事をご覧になって下さい。
錫酸塩浴で一般的なのは錫酸カリウムを用いたメッキ浴になります。
錫酸カリウムは「酸」という言葉が入っていますが
アルカリ性になりますのでお間違いなく。
因みに化学式はK2O3Snになります。
特徴としては陰極電流効率が高いので高い電流密度でめっきが可能な事です。
均一電着性に優れている為、付き周りが良くなります。
しかしながら、デメリットもあります。
めっき速度が遅いことやめっき浴温を70℃近く高温にしないといけない点です。
めっき時間に関してはこれから説明させて頂く酸性浴に比べると3倍程時間が掛かってしまいます。
めっき浴温に関しては、高温になるので取り扱いに注意が必要です。
更にアルカリ浴ではメッキ外観としては劣っており、銀白色で艶がある光沢めっきが出来ないのです。
よって、外観面を求めるのであれば酸性浴の硫酸浴の錫メッキがお勧めです。
ワンポイントとしてアルカリ性浴、酸性浴共に変色しやすくなってしまうので
後処理で変色防止としてクロメートを処理を行う事が多いです。
クロメート処理で一膜つける事で変色を防ぎます。
2.酸性錫メッキ
酸性錫めっき浴は硫酸浴、スルホン酸浴が挙げられます。
一般的には平滑な鏡面光沢が得られる硫酸浴が多く使用されています。
アルカリ性浴に比べ外観が良いこと、光沢のある綺麗な外観面を手に入れる事が出来ます。
めっき速度が速いことや常温での処理が可能というメリットも挙げられますが
なんといっても一番は綺麗な光沢外観です。
そんな酸性浴ですがデメリットもあります。
均一電着性はアルカリ浴に比べ劣っており、付き周りがあまりよくありません。
綺麗な光沢外観が特徴の酸性浴ですが、浴温度や管理を適切に行わないと
めっき面にシミやムラが出やすくなってしまうので注意が必要です。
これはアルカリ浴にも言えます。
その他にも中性錫メッキというものもありますが
中性のめっき浴となり、酸やアルカリに影響されやすい素材にめっきを施す際に適しています。
それぞれ、アルカリ性浴、酸性浴とそれぞれ、特徴があることはお分かり頂けたでしょうか。
両者とも変色防止としてクロメート処理を適切に行う事、めっき液の管理を適切に行わないと
折角の綺麗な外観面なのにシミやムラの原因になってしまうので注意が必要です。
クロメートについてはこちらから
綺麗な錫メッキを維持する為には手間を惜しんではいけませんね。
あと忘れてはならないのが錫メッキには「ウイスカ」がつきものです。
ウイスカ対策として錫メッキを施す前にニッケルメッキを下地処理として下地に施すことも良く使われます。
簡単に区分けするとアルカリ性浴は性能重視、酸性浴は外観重視といったところでしょうか。
![精密部品 硬質クロムメッキ](https://sanwamekki.com/info/wp-content/uploads/2020/11/cropIOTIMGL3520.jpg)
錫の合金メッキ
錫はその特性上、様々な合金メッキとして活躍しています。
以前はスズ-鉛の合金メッキ、はんだ合金メッキが主流でした。
特徴としてコストが安く、ウイスカが発生しない、機械的特性が優れているという
大変優秀な合金メッキです。
しかしながら、「鉛」が含まれておりこの鉛が規制物質になりました。RoHs規制物質にも該当します。
この環境規制の流れは毎度のようにお話していますが錫メッキでも対象になってきます。
前回の記事
【基礎中の基礎!+α】脱脂洗浄について Vol.2~溶剤・炭化水素系洗浄~ でもお伝えしましたが
時代の変化に合わせていかなければ行けないのです。
そこで代替品として
スズ-ビスマス スズ-銀 スズ-銅 スズ-ニッケル スズ-コバルト スズ-亜鉛
が多く使用されるようになりました。
しかしながら、スズ-鉛合金メッキのような万能なメッキ被膜は無く
それぞれの目的に合った合金メッキが採用されている傾向にあります。
それぞれの内容を挙げていきます。
スズ-ビスマス合金メッキ
錫とビスマスの合金メッキになります。
スズ-鉛の合金メッキと同等のはんだ付け性(はんだをつけやすくなる)が得られることが出来、
ウイスカの抑制効果も期待できることから電子部品の端子に多く用いられています。
ビスマス含有量を低くしないと接合強度が弱くなる恐れがあります。
スズ-銀合金メッキ
錫と銀の合金メッキになります。
最もウイスカが発生しにくいものになります。
はんだ接合強度が強く、熱に強く劣化しにくいという特性があります。
熱を持ってしまうパソコン内部の部品等に適しています。
銀を配合しているので単価が高くなってしまいますのでお忘れなく。
スズ-銅合金メッキ
錫と銅の合金メッキになります。
他に比べ価格が安いのが最大の特徴です。
他の鉛フリーの錫合金メッキに比べ、酸化しやすく、はんだ付け性も劣ってしまいます。
ウイスカも発生しやすくなってしまいますが下地にニッケルメッキを施してあげれば
ウイスカ対策が出来、短所を補う事が可能になります。
スズ-ニッケル合金メッキ
錫とニッケルの合金メッキになります。
特徴としてわずかにピンクがかかった色調になります。耐食性としては鉛フリーの合金メッキ中でも
特段優れています。装飾用の合金メッキとして主に用いられています。
スズ-コバルト合金メッキ
錫とコバルトの合金メッキになります。
色調がクロムメッキの色調に似ておりクロムメッキの代替として使用されることが多いです。
クロムメッキと比べ硬さや耐食性等は劣りますがバレルメッキでの量産が出来るので
外観だけクロム色にして安く仕上げたいという製品に向いています。
スズ-亜鉛合金メッキ
錫と亜鉛の合金メッキになります。
被膜に柔軟性があるので二次加工においてもクラックを生じたり、剥離することも無いのが特徴です。
はんだ付け性にも優れており、ウイスカも発生しにくいです。
最後に..
いかがでしたでしょうか。今回は錫メッキについてお話してきました。
少し長くなりましたが全て読んでいた方、重要な点だけ見て頂いた方、ありがとうございます。
錫メッキも他の表面処理同様、種類がたくさんあり特に合金メッキの種類がたくさんあります。
少しでも、1つでも何か参考になるものがあり、お役立ていただければ幸いです。
錫メッキも環境規制の煽りを受け様々なめっき液に変化しています。
その時代に応じた処理方法、特徴を理解しておくと目的の幅も広がると思います。
当社でも錫メッキを受け付けておりますので是非とも宜しくお願い致します。
執筆者プロフィール
![武藤 篤](https://sanwamekki.com/info/wp-content/uploads/2021/07/muto-300x300.jpg)
- 代表取締役
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株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
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