【酸洗いの疑問】SUSに酸洗いはできるの?
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こんにちは!
高崎市にございます(株)三和鍍金 事務の根岸です。
ついに梅雨明けしましたね!
これから暑い日が続きますが皆様体調は崩されないよう気を付けて下さいね(^^)
さて今回は、ステンレスへの酸洗いの話です。
弊社でも<酸洗処理>のページがHPに掲載されていますが、
材質*ステンレス
に焦点をあててコラムを書いていこうと思います。
是非ご覧ください♩
■酸洗いの目的とは
本メッキライブラリでも酸洗いについては何度か触れておりますが、改めておさらいです。
酸洗いとは表記の通り“酸”で“洗う”ということです。
金属に表面処理をするにあたり、金属表面が汚れていない状態にしないと上手く処理することが出来ません。
酸洗いとは、“酸系溶液”に金属製品を浸すことにより、金属表面に付着している以下のものを落とすことを目的としています。
★酸化物(黒皮)
★異物(ゴミ)やサビ
★溶接焼け
これらが除去されることにより、綺麗で均一な表面処理を施すことが可能となり、処理が不具合なく綺麗にされることで耐食性の向上にも繋がり、製品自体の持ちが良くなるのもポイントの1つです。
■酸の種類・取り扱い
酸性液にも様々な種類があります。
酸洗いでよく使用されているのが3種類となります。
★塩酸
★硫酸
★硝フッ酸
これらはガスが発生するなどの危険な薬品として知られておりますので、取り扱いには十分注意して作業をしております。
“酸系の液”って聞くと、すごく溶けちゃいそうな気がするし、なんかすごく危険な感じしませんか…?
まさにその通りで、酸化物や溶接焼けなどが酷い場合、長めに浸漬すれば綺麗になるのではないか?
と思いますが、浸漬時間に注意しないと生地に負担をかけ傷めてしまったり、溶けてしまうなどの原因となりますので注意しなければなりません。
…子供の頃、理科が苦手でしたが、苦手な私でも“酸”が付く液はなんかヤバい!!!って思っていました(笑)
■材質による使い分け
では、この酸系溶液。
取り扱い注意と言われているのになぜこんなに種類があるのでしょうか?
それは、金属製品の材質によって使い分けられるからです。
プレスされ弊社に納入頂く製品には、鉄・ステンレス・アルミ・・・など多種に渡った金属があります。
材質によって使用する液を変更しないと、素材そのものを溶かしてしまう恐れがあるのです。
イメージ的には・・・
お風呂にバスボムを入れるとシュワシュワ~!と溶け始めます。
途中、拾い上げると原型のないデコボコしたバスボムになっています。
使用する液や濃度を間違えると、この現象が起きるということです。
※お風呂のお湯:酸系溶液 バスボム:金属製品として考えてください。
さて!長くなりましたが、ここから本題です!
ステンレスの酸洗いについて
酸洗いの目的は溶接焼けなどを落とすことが目的と前述いたしましたが、
ステンレスの溶接焼けを落とすのって実は少し難しいのです。
ステンレスはニッケル(Ni)とクロム(Cr)が合金されていることで知られているのですが、このニッケルとクロムこそがネックなのです(>_<)!!
一般的に酸洗いの酸系溶液は【塩酸】が使用されることが多いのですが、このニッケルとクロムは塩酸だと弱すぎてサビや溶接焼けが落ちないのです…。
長く浸けても汚れ落ちがあまりよくないのに生地を傷めてしまうので、
三和鍍金ではステンレス材専用の強めな酸系溶液を使用することによって溶接焼けなどを落としております。
水回りの製品や食品機器関係、あるいは医療関係などにステンレス製品は多く用いられていますが、
茶色い溶接焼けがついている市販品は購買意欲を減少させてしまいますよね。
酸洗いをおこなうことでクリーンな現場で用いるのにふさわしい綺麗なマット調の見た目に変わります。
では…ここで1つ疑問に浮かぶのが
“電解研磨と酸洗いって何が違うの?”
ということです。
どちらもステンレス対応可能だし、目的も溶接焼けやスケール除去の対応できるし、どう判断すればいい?とお思いになる方もいらっしゃると思います。
結論から言うと、
・見た目をピカピカにしたいなら、電解研磨
・見た目をマットな雰囲気にしたいなら、酸洗い
電解研磨は金属表面を平滑化しながら溶接焼けを取るので、表面が均され光沢のある仕上がりとなります。
自動ラインで量産品でも対応できる反面、電気メッキのため製品の形状によっては強電部・弱電部(電解のかかりが強い・弱い)が存在する場合もあります。
つまるところ、形状によっては電解研磨が適合しない製品も存在します。
たとえば箱型形状・パイプ形状は内面が、L字型形状はL字内側部分が弱電部となってしまい、基本的には白く曇ったような外観になってしまいます。
原理的には弱電部となっている付近に補助極を追加することで改善可能なのですが、ライン構造上的に実際は難しい場合が多いと言えます。
一方、酸洗いは金属表面を荒らしながら溶接焼けを取るので、仕上がりとしては白く濁ったようなマットな感じの仕上がりとなります。
こちらは手付けでの処理となりますので、自動ラインのように強電部・弱電部はございません(=形状に品質があまり左右されない)が、人の手で1つ1つ処理をしていくので時間がかかる場合があります。
それぞれの特性・品質要件に合わせて適切な処理を選択することが非常に重要です。
また、サビを除去したい場合はショットブラストという処理もあり、仕上がりはザラザラとした感じになります。酸洗いであればサラッとした感じです。
インテリア・キッチン用品に使用する製品の場合、見た目のこだわりもあると思いますので、ご希望の外観になる処理をオススメ致します。
以上のことより、材質・目的・用途により酸洗いでも処理が区別されるされているのがお分かりいただけたかと思います。
■まとめ
酸洗いとステンレス材についてフォーカスしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
“酸洗い”と一括りにしてしまうと“溶接焼けをとる・スケールの除去”など【目的】にしか目がいかないのですが、実は材質によって酸の種類も変えているという【繊細さ】もご理解いただけたかと思います。
ステンレス材専用の酸系溶液で酸洗いをしているところはあまりないそうで、さらに材質別の酸洗いをが対応できるところも少ないそうなので、“この材料は酸洗いできるのかな…?”と疑問に感じているお客様いらっしゃいましたら、お気軽にお問合せください♩
(株)三和鍍金ではお客様のご要望・用途に合わせた表面処理を提案させて頂いております。
表面処理の件でご不明な点等ございましたら、お気軽にご連絡くださいませ。
皆様からのお問合せ お待ちしております(^^)
執筆者プロフィール
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ウエディング・旅行業界で勤務後、株式会社三和鍍金に入社。
事務員として伝票発行や納期管理をする傍ら、サービス業で培った高いホスピタリティ(おもてなし精神)を活かし、三和鍍金に関わる全ての方々が気持ち良く過ごせるようなお客様対応を心がけている。
メッキについて初心者であることを活かし、「メッキ初心者の視点」で書いたコラムはいずれも高い人気を博している。
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