【単純な疑問】黒皮材にメッキしたらどうなる?
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※2023年9月21日に加筆修正致しました
こんにちは!群馬県高崎市にございます(株)三和鍍金 事務の根岸です。
今回はすごくすごく単純な疑問!
黒皮材にそのままメッキをつけたらどうなるのか?です。
弊社では黒皮材への前処理が可能ですのでお気軽にお問合せ下さい
‘黒皮材なのでショットしないとメッキがつきません’
‘酸洗いしてからでないとメッキがつきません’
と、当然のように案内された経験ございませんか?
…メッキをつけたいだけなのに、そのショットとやらはなんだ?
なんでその処理をしないといけないのだろう…料金アップするな…
そう思ったことはございませんか?
メッキの会社で働いている方は、
【黒皮材=ショット(または酸洗い)して落としてからメッキ処理】と当たり前に思うことなのですが、
実際お問い合わせ頂くお客様の中でも、このような疑問を持っている方がいらっしゃいます。
そこで!今回のコラムでは、黒皮材とメッキの関係性について簡単に説明していこうと思います。

黒皮についてYouTubeで動画を公開しています。
こちらも併せてご参照ください。
□黒皮材って何?
黒皮については以前別のコラムでもご紹介いたしましたが、簡単に説明させて頂きます。
製品のもととなる《鉄鋼》
熱間圧延(金属を再結晶温度以上に加熱して圧延する加工法)により、鉄鋼を約1000℃程で熱し鉄を柔らかくし製品の形を作ります。
熱せられた鉄鋼が空気中に晒され続けるとだんだん冷めていきます。
冷める過程で空気中の酸素と結合(鉄の表面が酸化)することにより、黒い酸化被膜(黒錆)が作られます。
この黒い酸化被膜(黒錆)こそが黒皮の正体です!
皆様が“錆”といわれてパッと思いつく茶色くてボロボロの錆…
あれは【赤錆】と呼ばれるもので鉄をどんどん腐食させていく悪い錆です。
一方、黒皮の正体である【黒錆】
黒錆自体は鉄の表面をコーティングしている酸化被膜であり、鉄の内部に侵食することのない良性の錆です。
ですが!
酸化被膜といっても表面全体を覆っているわけではなく、実際は凹凸があったり小さな穴が生じているので、完全に防錆ができている状態ではありません。
□黒皮材にめっきをつけたらどうなる?
では、この黒錆=黒皮除去をせずメッキ処理をしたらどうなるのでしょうか?
答えは、メッキがつきません。
黒皮の特徴として以下のようなことが挙げられます。

例えて言うならば、画用紙に絵を描くことを想像してみてください。
画用紙 ⇒ 製品
絵具のついた筆 ⇒ メッキや塗料
黒皮 ⇒ ろうそく
画用紙にろうそくを塗り付けた部分に絵具のついた筆で絵を描いてみたとしましょう。
・・・ろうそくではじかれて絵が描けないですよね。
黒皮材にメッキをするということは、この現象が起きていると考えて頂ければ分かりやすいかと思います。
製品への密着性が極めて悪いということです。
万が一メッキがのったとしても、黒皮材の特徴として挙げた4つの事柄より、メッキや塗料がはがれやすく製品も長持ちしなくなります。

□黒皮を落とす方法
では、この黒皮材を落とす方法はあるのでしょうか?
先程お伝えした通り、黒皮材表面は凹凸や小さな穴などで不安定な状態なので、製品表面を均さなければいけません。
その為の黒皮除去の方法は大きく2つあり、どちらもメッキをつける前処理としてとても重要です。
①ショットブラスト
②酸洗い
①ショットブラスト
製品表面に投射物(細かい砂)を衝突させ、製品表面に研磨効果をもたらします。

写真のような投射物を製品表面に衝突させ、黒皮や付着物 錆などを落とすことができます。
それにより製品表面を均一に整え、以降に処理するメッキの密着性を高めることができます。
弊社内でもショットブラストは扱っており、製品にひっかけ穴がある、板厚が厚い製品などはショットブラストすることが可能です。
板厚が薄い製品をショットブラストしてしまうと、製品が曲がってしまうことがあるので注意が必要です。
ショットブラストは梨地メッキともいわれ、梨のようなザラザラしたような仕上がりになるので、無光沢になります。
光沢を出したい製品には向いていないので注意が必要です。

②酸洗い
酸系溶液に製品を浸漬し、製品表面についている黒皮や錆 溶接焼けなどを取り除くことができます。
製品表面の異物を取り除き、メッキの密着性を高めることができます。
こちらの酸洗いも弊社内で扱っており、製品にひっかけ穴がない、Lot数が少ない製品に向いています。
ステンレスに対応できるもの、鉄に対応できるものなど、材質により扱う酸系溶液が変わるの注意が必要です。

□まとめ
黒皮材にそのままメッキをしてしまった場合のリスク、ご理解頂けましたでしょうか?
余計な前処理で料金がかかるな…と思っていた方もいらっしゃるかと思いますが、
長い目で見た時、後々処理のやり直しや買い直しなどで前処理以上のコストがかかってくることもございます。
不安な場合は必ずご相談ください。製品に合わせた最善の方法をご提案いたします。
お気軽にご相談ください!!
執筆者プロフィール

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ウエディング・旅行業界で勤務後、株式会社三和鍍金に入社。
事務員として伝票発行や納期管理をする傍ら、サービス業で培った高いホスピタリティ(おもてなし精神)を活かし、三和鍍金に関わる全ての方々が気持ち良く過ごせるようなお客様対応を心がけている。
メッキについて初心者であることを活かし、「メッキ初心者の視点」で書いたコラムはいずれも高い人気を博している。
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