【環境規制!?】カチオン塗装のスズフリーについて
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※2023年9月20日に加筆修正致しました。
皆さま、こんにちは。群馬県高崎市にある三和鍍金の武藤です。
今回は【環境規制!?】カチオン塗装のスズフリーについて解説していきます。
弊社ではジブチルスズフリーのカチオン塗装を行っておりますのでお気軽にお問合せ下さい
昨今、環境規制による禁止物質が増えてきているのは皆さんご存知かと思われます。
溶剤、クロム、シアン等、Rohs指令やReach規則といった管理物質も多数存在しています。
今回は、そんな中でも弊社で行っているカチオン塗装のスズに関して
フォーカスし解説して行こうと思います。
Rohs規制についてはこちらから
目次
カチオン塗料のスズについて
カチオン電着塗装は塗料に被塗物を浸漬し、電気を通電させることで皮膜を形成させる処理なのですが
この塗料の中にスズが含有されているものが多いです。
カチオン電着塗装や塗料の組成に関しては以下の記事をご覧になって下さい。
それでは「スズ」はカチオン塗料にどのくらい入っているのか、そして何故入っているのでしょうか。
まずどのくらい入っているのかですがカチオン塗料に入っているスズは物凄く僅かなのです。
スズ化合物として塗料の含有量としては0.5~2.0%、塗膜としても※1000ppm以下となってることが多いです。
※ppm=パーツパーミリオン(100万分の1)
勿論、塗料メーカーや加工メーカーの液組成によって異なってきますが・・・
以上のように僅かしか入っていないことがご認識頂いたところで
今度は何故スズが塗料に入っているのかをご説明します。
一番重要な機能は塗膜を硬化させるための触媒としての役割を果たしています。
カチオン塗装は塗料に被塗物を浸漬し、電気を流すことで塗膜を形成する処理なのですが
工程を順に追ってくと前処理-カチオン塗装-焼付乾燥となります。
今回のスズが活躍するところが「焼付乾燥」の工程になります。
ここで一度、焼付乾燥をする前とした後のビフォーアフターを見てみましょう。
画像だとわかりづらいかもしれませんが
左の乾燥前はカチオン電着槽から上がってきてすぐの状態です。
全体的に濡れており、塗膜が不完全です。
右の乾燥後は左の焼付乾燥前から焼付乾燥炉を通ってきた状態です。
余分なものを焼付乾燥工程で飛ばし、塗膜が完全に形成されています。
光沢が出て鮮やかな黒色となっています。
焼付乾燥前は塗膜が硬化されておらず塗膜が完成されてないことがお分かり頂けると思います。
焼付乾燥の主な目的は余分な溶剤や水分を飛ばして塗膜を形成させるのですが、
その際にスズが活躍するのです。
焼付乾燥時に塗膜を硬化させやすくすることでより早く、より美しい塗膜になります。
ジブチルスズとジオクチルスズ
カチオン塗料の中に含まれているスズは大きく2種類あります。
ジブチルスズ化合物(DBT)ととジオクチルスズ化合物(DOT)です。
REACH規則ではジブチルスズもジオクチルスズも1,000ppm未満と定められております。
ただし対象範囲の濃度は、金属換算したスズ質量による濃度となります。
因みに換算式は以下の通りとなります。
スズ含有濃度=[均質材料中の特定有機スズ化合物の含有濃度〕×〔スズ換算濃度〕
要するにスズの化合物を測定しそこから計算式に基づき金属換算したスズ質量によってスズの含有濃度を求めます。
これが1000ppm以下であれば基準値内という認識になると思います。
ジブチルスズ化合物の主な使用用途は樹脂の安定剤、塗料、接着剤。
ジオクチルスズ化合物の主な使用用途は肌に触れる織物、布製品になります。
カチオン塗料の鉛の規制
REACH規則の一方、数年前にカチオン塗料の成分に鉛が含有されていたことが在りました。
その際に鉛に関してはRohs規制により使用制限・禁止されました。
カチオン塗装メーカーも対応をすべく今日では鉛を含有しているカチオン塗装メーカーは少ないと思われます。
しかしながら、Rohs指令はあくまでEUの基準ですので日本国内で製造し販売する場合、日本の各法令、指令の基準を満たしていれば特段問題ないと考えられます。
このように環境規制は定期的に見直しされているので環境規制がかかると使用に制限が掛かります。
その時々で対応したり先を見据えて環境対応していくことも大切になります。
スズフリー塗料
昨今の環境規制は管理物質が多くなってきています。
そこでカチオン塗料もスズを含有していないスズフリーの塗料の扱いも始まっています。
あれ?スズが入っていないと塗膜が硬化しないのではないのと思った皆さん。
その通りです。スズを入れないと塗膜の硬化や塗膜性能に影響を及ぼす恐れがあります。
それでは、スズフリー塗料とはどういったことでしょうか。
実はスズフリー塗料はスズを入れない代わりにスズ同等の性能を付与することが出来る代替品を塗料に入れています。
これに関しては塗料メーカーのノウハウとも言えるので何とは断言できませんが・・・
しかしながらこのスズフリーの塗料、出回る数量が少なく金額が高いといったことや
あまり出回ってないという所で使用しているカチオン塗装メーカーは数少ないと言えます。
多くのカチオン塗装メーカーはジブチルスズ或いはジオクチルスズを使用していると予想されます。
時代の流れによってはスズフリー塗料が当たり前になってくるかもしれませんね。
鉛フリー、ジブチルスズフリーのカチオン塗装なら株式会社三和鍍金へ
皆さま、いかがでしたでしょうか。
今回は 【環境規制!?】カチオン塗装のスズフリーについて解説してきました。
環境規制は未来を考える上で必要なことですが、
禁止なのか制限なのか、基準値があるのか等をよく確認しないとあれもダメ、これもダメということになりかねません。
そういったことを注意しながら、法令を遵守しながら、生産を安定的にすることが大切なことになります。
弊社のカチオン電着塗装は鉛フリー、ジブチルスズフリーのカチオン塗装を行っております。
環境規制にも応え、安定した品質を提供出来るように日々精進しておりますので是非ともお気軽にお問合せ下さい。
執筆者プロフィール
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株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
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