【基礎中の基礎!】カチオン電着塗装について
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群馬県高崎市にある(株)三和鍍金、事業統括部の柳沢です。
今回は【基礎中の基礎!】シリーズの「カチオン電着塗装編」です。
弊社はカチオン電着塗装を数多く行っていますのでお気軽にお問合せ下さい
そんなカチオン電着塗装について基本的な部分をまとめていきます(最後に「蛇足」もございます)。
以下の動画も、是非合わせてご覧になってください。
目次
カチオン電着塗装とは
カチオン電着塗装とは、名の通り「塗装」の一種です。
水溶性塗料を溶かした槽に製品を浸漬させ、電気の力を使って塗膜を形成させます。
電気を使うため弱電部や強電部にはやはり多少膜厚にばらつきが出てしまいますが、メッキに比べると複雑な形状の製品でも比較的均一に表面処理することが可能です。
弊社のカチオン塗装では、鉄材はもちろん銅、真鍮、ステンレス、アルミ、亜鉛ダイカストなど多種素材に対応しています。
カチオンとアニオン
「カチオン電着塗装」という単語を初めて知った方が恐らく必ず思うこと。
「…カチオンってなんだ??」
この疑問にお答えします。
端的に結論から申し上げますと、カチオンとは陽イオンのことです。
対義語である陰イオンはアニオンと言います。
したがってカチオン塗装の定義とは、製品をマイナス極に、電極をプラス極にして電着を行う処理方法であり、
対してアニオン塗装の定義とは、製品をプラス極に、電極をマイナス極にして電着を行う処理方法だと言えます。
一般的にカチオン塗装は鉄材向き、アニオン塗装はアルミ材向きと言われていますが、
弊社のカチオン塗装では切り替え技術によってアルミ材にも適した処理を施すことが可能となっております。
カチオン電着塗装のメリット・デメリット
メリット
カチオン塗装の特長として、非常に高い耐食性を持っていることが挙げられます。
「錆びないメッキ」と言われる亜鉛メッキも、通常の亜鉛メッキ+3価クロメートだとまだ耐食性が不十分な場合がございます。
そういった場合に耐食性の更なる補強としてカチオン電着塗装をするケースがあります。
他にも耐食性補強の代替として亜鉛ニッケルメッキや合金メッキなどもございますが、
それらより「コストが安い」というのもカチオン塗装のメリットになります。
また、弊社のカチオン塗装の場合、通常膜厚が20μm前後のところ膜厚コントロールのノウハウによって10μmほどまで薄くすることも可能ですので
下地に良く適しているというのもカチオン塗装のメリットの一つです。
また、弊社のカチオン塗装は近年の環境規制に対応可能な
鉛フリー、ジブチルスズフリーの塗料を採用しておりますので、
RoHS指令やREACH規制にも問題なく対応できます。
デメリット
カチオン塗装のデメリットとしては、まず耐候性に劣るという点が挙げられます。
当社のカチオン塗装はエポキシ樹脂を使用しているので樹脂の特性上、耐候性に劣ります
塗料の特性に関してはこちらをご覧ください。
とりわけ直射日光に弱いので、年中日差しに曝されるような場所にカチオン塗装の製品を採用する場合は、上塗り塗装が必要になります。
実際のカチオン塗装使用例といたしまして、沿岸部にある郵便ポスト(腐食条件としては潮風や直射日光など)の下地として採用されたこともございますので、
耐候性の高い上塗り塗装をしていただければ、耐食性・耐候性どちらにも優れた製品に仕上げることが可能です。
弊社では上塗り塗装まで一貫して対応する事が可能ですので、お気軽にお問い合わせください。
また、塗膜・皮膜が柔らかいというのもデメリットと言えるかもしれません。
「皮膜が柔らかい=傷がつきやすい」なので、こちらの対策といたしましては当たり前ですが「丁寧に扱う」ということになります。

膜厚制御
弊社のカチオン電着塗装は基本的に20±5μを基準値としておりますが、
弊社独自のコントロールによって、厚膜、薄膜にも対応出来ますのでお気軽にお問合せ下さい。
注意点として厚膜にしすぎると表面に凹凸が生まれボコボコした見た目に、
薄膜にしすぎると色が薄茶色っぽくなることもございます。
外観や品質状態をよく確認した上、ご相談させて頂く必要がございます。
処理実績
弊社カチオン塗装ラインでは、自動車部品がおよそ6割程度を占めます。
耐食性がかなり高いため、より長く使う必要がある自動車部品は採用するにふさわしいと言えます。
他にも耐食性を目的としてトラック部品や建築金物などに処理をすることも少なくありません。
また、カチオン塗装は比較的安価に金属の色を黒くする手法としても用いられています。
塗装ですので樹脂の皮膜ではあるものの、黒半艶の綺麗な仕上がりになり、
仏間に飾る装飾品の部品やゴルフのシャフトなどの実績がございます。
さらにカチオン塗装の皮膜には一定の絶縁性があるため、電子機器部品などにおいて絶縁性を目的とした処理もご相談いただいたことがあります。
カチオン塗装の絶縁性について、詳しくはこちらの動画をご覧ください。
蛇足~カチオンとアニオンの語源~
さて、ここからは「蛇足」になりますので、ご興味のある方のみお読みいただければと思います(笑)
大学時代言語を学んでいた私個人としては「語源」というのは非常に気になるところでして、
是非皆様にもお伝えしたいと思い、最後にページを割いているわけでございます。
ファラデーと「katienai」
皆様はファラデーという学者をご存知しょうか。
マイケル・ファラデーは19世紀前半に活躍したイギリスの化学者・物理学者で、電磁気学や電気化学の分野で功績を残しました。
なぜおよそ200年前のイギリス人学者の名前を出したかというと、このファラデーこそ「カチオン」の生みの親だからです。
実は、「カチオン(cation)」の語源はギリシャ語の「katienai」。
「katienai」とは和訳すると「下がるイオン」です。
どういうことでしょうか。
「ienai」とは
ファラデーは電気分解にあたって「電荷を帯びた何かが生じ、それが移動することで電気分解は行われる」と考えました。
そこで「行く」という意味のギリシャ語「ienai」をとって、「電荷を帯びた何か」を「ion(イオン)」と呼びました。
つらつら書いてきた通り、イオンには陽イオンと陰イオンがありますから
それらを電気分解時のイオンの動きになぞらえて「katienai(下がるイオン、陽イオン)」、「anienai(上がるイオン、陰イオン)」と呼び、そこからそれぞれ「cation(カチオン)」、「anion(アニオン)」という英語になったのです。
我々が今も普通に使っている単語は、200年も昔のファラデーという人物がつくったものだったわけですね。
因みに…
ファラデーが「いま」に残した言葉は「カチオン」や「アニオン」だけではありません。
電極を「カソード(cathode)」や「アノード(anode)」と呼ぶことがあるかと思いますが、
この二つも先の原理と同じ方式でつくられたものです(ギリシャ語で「道」を意味する「hodas」と上がる下がるの頭語がくっついたもの)。
他にも「electrolysis(電気分解)」や「elecrtolyte(電解質)」、「electrode(電極)」などの用語が生み出されたそうです。
※ギリシャ語が多数登場しますが、ファラデーはイギリス人なので最終的にはもちろん英語になっています。
最後に…
いかがだったでしょうか。
珍しく書きすぎたなあと反省しております。
カチオン塗装に関しまして弊社には多数の実績がございますので、製品実績ページなどから是非ご覧になってください。
その他些細なことでもお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール

- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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