【六価クロムメッキ代替】スズコバルト合金メッキってなに?【RoHS対応】
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※2023年9月22日に加筆修正致しました。
こんにちは。
群馬県高崎市にてめっき・塗装・研磨をおこなっております、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
今回は「スズコバルト合金メッキ」についてのコラムとなります。
弊社ではスズコバルト合金メッキの取り扱いも御座いますのでお気軽にお問合せ下さい
皆様、耳にしたことがございますでしょうか。
クロムメッキの代替として知られているこのスズコバルトメッキですが、
・なぜクロムメッキの代替として重宝されているのか?
・そもそも合金メッキとは何なのか?
・どんな性能なのか?
これらの疑問に答えていきたいと思います。
それではいってみましょう!
目次
合金メッキとは?
スズコバルトメッキは合金メッキの一種になります。
合金メッキとは一体何なのでしょうか。
メッキと一口に言えど、実はその中にも様々な分類がございます。
たとえば電気を使うもの・使わないものという括りであったり、
単層(皮膜の層構成が1種類のみ、硬質クロムメッキなど)・複層(皮膜の層構成が2種類以上、半光沢Niと光沢Niのダブルニッケルなど)という括りであったり。
その中の括り方のひとつとして、「皮膜が単一金属なのか合金なのか」という観点があるのです。
単一金属とはつまり、先に挙げた硬質クロムメッキやダブルニッケルなどに関して言えば、
これらはそれぞれクロム・ニッケルという個々の金属のみで皮膜が形成されています。
一方で今回ご紹介するスズコバルトメッキや亜鉛ニッケルメッキ、鉄亜鉛メッキなどは、皮膜が合金ですので
スズコバルトはスズとコバルトが混ざった皮膜、亜鉛ニッケルは亜鉛とニッケルが混ざった皮膜、鉄亜鉛は鉄と亜鉛が混ざった皮膜になります。
詳しくはこちらをご覧ください。
スズコバルトメッキって何?
さて、ではスズコバルトメッキとはどういった特徴をもつメッキなのでしょうか。
名前の通り金属であるスズとコバルトから成る合金メッキで、文房具や音響機器など様々な分野で用いられています。
なんといってもクロムの色をバレルメッキで再現できるというのが非常に魅力的と言えます。
詳しくは後ほどお話しますね。
また、耐食性・耐摩耗性・耐変色性に優れていると言われています。
ただし単体の膜厚自体は0.2μ程度と非常に薄いため、下地でニッケルメッキを施すことで耐食性を向上させています。
キズ防止のためにスズコバルトメッキの上にさらにトップコートを施すこともあります。
補足ですが、耐食性や耐摩耗性(硬度)について、下地ニッケルがあったとしてもクロムメッキと比較するとさすがに劣ってしまいます。
性能面で言えば、完全補完というより損なわない程度とご認識いただいた方がよろしいかもしれません。
また、バレルで処理をする場合は細かな打痕や傷が発生しがちですので、全くの傷なしをご希望の場合はラック(引っ掛け)方式で処理をするか、
網付け方式と呼ばれる網の上に製品を置いた状態で処理をする方法を選択する必要がございます。
これは試作をおこなった上で微細キズや打痕の程度をご確認いただいた方がよろしいと思います。
なぜクロムメッキの代替として重宝されるのか?
上述したようなスズコバルト合金メッキですが、なぜクロムメッキの代替として重宝されているのでしょうか?
大きく分けて3つの理由がありますので、それぞれ解説していきます。
色が似ている
まず、クロムメッキの色とスズコバルト合金メッキの色が非常に似ていることが挙げられます。
これは代替処理となる前提ではありますが、大きく外観が異なっていれば代替のめっきとしては使えませんよね。
写真ベースではめっきの玄人でもその外観の違いはほぼわからないかもしれません。
ステンレスやクロムメッキのシルバー色に似通っており、さらにプラス下記のメリットがあることで広く採用されているのです。
クロムメッキより付きまわりが良い
これもかなり大きな利点のひとつです。
従来のクロムメッキというのは実は付きまわりが他のメッキと比較した時にあまり良くありません。
付きまわりというのは「めっきの付きやすさ」のようなものです。
「めっきの付きまわりが良い」イコール「均一電着性に優れている」だとか「電流効率が良い」と表現されることもありますが、
広義的にはこれらすべて「めっきが素材に対してどれくらい付きやすいかを表す指標」と言えます。
クロムメッキは付きまわりが比較的悪いために、形状・場所によっては部分的にクロムメッキがつかなかったり、
電気的にかなり安定した状態でないと形状が問題なかったとしてもめっきがつかなかったりすることも起き得ます。
つまり、品質の良いクロムメッキをおこなっているメッキ屋はこれらの問題を解消しながら処理をしているわけなのですが、
対してスズコバルトメッキは付きまわりが良く均一電着性に優れていますので、
クロムメッキを施す場合に四苦八苦しなければいけない形状(溝・くぼみ・複雑形状)でも
通常工程で処理するだけでそのままキレイにめっきがつく、というわけです。
この性質のおかげでクロムメッキでは成し得ないバレル処理が可能となっています。
通常、弊社でもおこなっているクロムメッキは電気的に安定した状態で処理、つまりラック方式でめっきをしなければうまくめっきがつきません。
※バレルとラックの違いについてはこちらの動画(YouTubeに飛びます)やこちらのコラムをご参照ください。
ではバレルで処理することでどんなメリットがあるのか、それはずばり「安く・早く・大量に」処理ができるという点です。
上述したスズコバルトメッキが採用されている業界を鑑みるとよくわかりますね。
ラック(引っ掛け)方式のめっきよりも一回で大量の製品をめっきできるため、
「安価に大量生産でクロムメッキがもつ美観を再現したい」というニーズにドンピシャというわけです。
RoHSに対応している
最後に意外と知られていない利点のご紹介です。
皆様、RoHSという環境規制を耳にしたことはございますでしょうか。
ものづくりに携わる方であれば、耳にタコができるくらい聞いた!という方も少なくないかもしれません。
このRoHS指令とはヨーロッパで2006年に施行されたもので、海外、特に欧米に向けて輸出する製品の場合は設計段階から非常に気にしなければならない規制のひとつです。
※RoHSについて、詳しくはこちらをご参照ください。
よく皆様も「三価クロムが~」とか「スズ含有量が~」とか「鉛フリーで~」とかそこかしこで聞く機会があると思いますが、
このあたりはRoHS或いは別の環境規制関係が起因していることが多いでしょう。
従来一般的な装飾クロムとしては、六価クロムをめっき液に使用したクロムメッキが主流でしたが、
RoHSを受けて欧米向け製品の場合、六価クロムメッキは使用不可!という通説が一気に広まりました。
※この部分については、メッキ屋が全員声を大にしたい補足があるので最後に触れます。
そこで同じ(ような)外観を得続けるために選択できるのは「三価クロムメッキ」か「スズコバルト合金メッキ」或いは「ステンレス(メッキレス)」にするかの三択です。
いずれもRoHSには対応しているので、それぞれの性質やメリットを鑑みて現在は皆様表面処理を選択しています。
つまるところ、スズコバルトメッキもRoHSに準拠しておりますので、欧米向け製品にも問題なく採択していただけます。
まとめと補足~六価クロムメッキについて~
いかがだったでしょうか。
スズコバルト合金メッキとはどんなものなのか、何となくお分かりいただけたかと思います。
弊社でも取り扱いがございますので、ご希望であれば是非ご相談ください。
現在対応可能なめっき・塗装・研磨は50種類を超えておりますので、「ショットブラスト+めっき」や「バレル研磨+めっき」など複合的なご対応も可能です。
何かございましたらお気軽にご連絡ください。
ショットブラストについてはこちら
バレル研磨についてはこちら
その他表面処理についてはこちら
最後に上述した部分に対する補足を少し。
皆さん六価クロムと聞くとどういうイメージになりますでしょうか?
基本的には「有害」という言葉が真っ先に思い浮かぶ方が多いのではないかと思います。
しかし、実はそのような一般的な認識の中に、間違っていない部分と誤認されている部分があるのです。
クロムという物質にはいくつかの形態が存在しています。
水という物質に水(液体)・氷(固体)・水蒸気(気体)とそれぞれ違う在り方があることをイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。
※水の例えと今回のクロムの形態の話はもちろん厳密には違います。
クロムにあるのはイオン・化合物・金属という三つの形態で、六価クロムに関して言えば重要なのはそれぞれ有毒性が異なるという点です。
六価クロムイオン・六価クロム化合物については皆様の認識通り、有害ですので使用用途や使用場所は思案する必要がございます。
実際、RoHS指令の発端になったのは六価クロム化合物の皮膜をつけている亜鉛メッキ六価クロメートを施した製品から、欧米の酸性雨によって六価クロムが流出したという事件です。
これは六価クロム化合物ですので六価クロムを含んでおり有害ですし、金属化していない皮膜が酸によって溶け出すことで環境汚染の問題が出てきます。
したがって、亜鉛メッキにおいて六価クロメートを三価クロメートに変えるというのは正しい認識に基づく動きと言えます。
対してクロムメッキについて考えた時、六価クロムが金属化した場合、それはゼロ価の金属クロムですので有害ではありません。
六価クロムも含まれていません。
したがって、「六価クロム」や「三価クロム」という言い方自体が「金属のクロム=クロムメッキ皮膜」を指す際には適用されないと言えます。
ゼロ価の金属クロムは私たちの食器類や医療器具などにも多用されているステンレスに含有されていますからね。
これが金属クロムが人体に対して有害でない何よりの証明です。
しかし、実際のところは金属クロムの皮膜をつけているクロムメッキにおいて
めっき液(イオンの状態)で六価クロムを使用していれば採択不可となってしまっている現状があります。
めっき液の状態から有害でない三価クロムを使用しなければならない、と。
「得体が知れなければとりあえず禁止しておこう」というのは個人的には理に適っていると思いますが、
めっき業界全体としては痛手であると言えます。
このあたりの話は化学的で非常にわかりづらく、かつ業界が古いために整然と説明された資料のようなものもほとんどありませんので
「六価クロムメッキは有害」という誤った認識が広まってしまったものとみられます。
三価クロムメッキについては耐食性が優れないなど問題はありつつも、
クロムメッキに関しても六価クロムから三価クロムへの移行は今後進んでいくとみられます。
長々と失礼いたしましたが、結論は以下の通りです。
・クロムイオンには三価と六価がある
・イオン状態及び化合物状態だと六価は有害
亜鉛メッキについて
・クロメート皮膜は金属でないので、めっき液に六価クロムを使用している場合は有害なまま
・欧米に輸出する際はRoHSに準拠して六価クロメートから三価クロメートに変更する必要がある
クロムメッキについて
・クロムメッキ皮膜は金属(ゼロ価)なので、めっき液に六価クロムを使用していても無害
・本来は欧米に輸出する際でも六価クロムメッキで問題ないが、現状三価クロムメッキに変わりつつある
気になる方は他のめっき業者様のHPもご覧になってみてください。
クロムメッキをおこなっている業者様(弊社も含めて)においては、やはりこのあたりの認識に一定の不満があるようです。
私も日々心に留めていますが、「何事もまずは知ることから」ですね。
執筆者プロフィール
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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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