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columnメッキライブラリ

2021.05.20

【気になる疑問】電気メッキは何故パイプ内面にはつかないのか

2023年9月20日に加筆修正致しました。

群馬県高崎市にある(株)三和鍍金の武藤です。

今回は【気になる疑問】電気メッキは何故パイプ内面につかないのかについてご説明させて頂きます。

弊社では電気めっきの取り扱いがございますのでお気軽にお問合せ下さい

めっきの見積もり依頼を出すと「内面が無メッキになります」「ポケット部はめっきがつきません

出来上がった製品を見てみると「内面にメッキがのっていない!!」「全面に付くと思っていた・・

なんてこと多いのではないでしょうか。

めっき屋さんに聞いても「つかないものはつきません」の一点張りで何故つかないのか分からない。

そんな疑問に対して今回の記事をご覧になって頂ければ謎が解明されると思います。

実はこれ内面にもつけられる方法もあるのです。気になりますよね。

それでは、行ってみましょう。

電気メッキの原理

そもそも電気メッキとは電気を用いりメッキを付けるものになります。

製品形状によっては強電部、弱電部が存在してきます。これは前回の記事で説明していますので

ご覧になっていない方は下記よりご覧になって下さい。

この電気メッキにおける弱電部と強電部をご理解頂けると今回の理解も深まると思います。

つまり、電気めっきはめっきがつきやすい箇所とつきづらい箇所が出てくる訳ですね。

それでは、今回のテーマであるパイプではどうでしょうか。

早速、見ていきましょう!!

パイプ内面におけるメッキ

それでは、本題である何故パイプの内面にはメッキがつかないのでしょうか。

実はこれ、厳密にはめっきがつかないのでは無くめっきがつきづらいと言った方が良いでしょう。

電気メッキはめっき浴中に金属を溶かし金属イオン電子によってめっき被膜が生成されるのですが

パイプ内面は電気が行き届きづらく反応がしづらいのです。

下記の図で示すようにパイプ外側(赤色)は極板に対し障害物が無いのでメッキ被膜がつきやすいのです。

しかしながらパイプ内側(灰色)はパイプ外側(赤色)が電気を遮ってしまうのです。

よって内側には電気が流れづらい為、めっきがつきづらいのです。

それでは、パイプ内側には全くめっきがつかないのかという事ですが

厳密にはパイプ内側であってもある程度パイプ径が広い場合は先端部にはつきます。

パイプ内面へのめっきはパイプの形状によってもめっきの付きまわりは異なってきます。

下記にサイズの違うパイプの図を用意しました。

下記の図で示した通り左から3番目のパイプでは先端が赤くなっていると思いますが

この程度だったらめっきはつきます。勿論、条件によっては異なりますが・・

パイプ径や長さ、めっき液の構成、電圧の掛け方、形状によっては異なりますので

一概には言えませんが電気メッキのパイプ内側の8割から9割はめっきがついていないと言っても過言では無いでしょう。

パイプ内側へのめっきはつけられるのか!?

それではパイプ内側にはめっきをつけることは不可能なのでしょうか。

答えはNOです。めっきを付ける方法はあります。

何パターンかありますので代表例を挙げていきます。

1.パイプ内部に補助極を設置し内側にも電気を通りやすくする

パイプ内部に補助極を持ってくることによりパイプ内側に電気を直に当たるようにし

パイプ内部にもメッキを付ける方法です。

デメリットは専用治具を製作しないといけない点と自動ラインでの量産が難しい点が挙げられます。

2.無電解めっき等の電気を使わないめっきをする

そもそも電気を使用しない無電解メッキを付ければ可能です。

無電解銅メッキや無電解ニッケルメッキのことです。

しかしながら、パイプ径が小さい場合にはめっきがつかないこともありますので注意が必要です。

めっき液の流動も重要なポイントになります。

3.パイプに穴をあける

パイプ横に穴をあける事で電気を内側にも通す方法です。

これは、設計変更を伴いますので注意が必要です。

設計の段階で表面処理を考慮すればパイプ内面にも塗膜を形成することができますのでご検討下さい。

電気メッキ以外のパイプ内面への表面処理

電気メッキ以外にも電気を用いた表面処理は多数存在します。

例えば当社での取り扱いがあるカチオン電着塗装も電気を用いて塗膜を形成する表面処理です。

電気を用いて表面処理を施す場合、ほぼ全てのモノはパイプ内面への被膜がつきづらいと言えます。

勿論、塗装やめっきの種類によって異なりますので一概には言えませんが理屈は同じです。

よってパイプ内側への対応は電気を用いた表面処理であれば注意が必要と言えます。

最後に..

いかがでしたでしょうか。パイプ内部のめっきや塗装はよくあるお問い合わせの中の一つです。

解決する為には前述した通り方法を変えたりと工数も掛かってしまう事がほとんどです。

設計変更やパイプ内部へどうしても被膜を付けたいが単価は高くしたくないが皆さんの本音ですよね。

当社ではお客様に寄り添って最適な提案をさせて頂きますので是非一度ご相談ください。

今回も最後までご覧になって頂きありがとうございました。

PROFILE

武藤 篤
武藤 篤代表取締役
株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
三和鍍金Youtubeチャンネル
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