【基礎中の基礎!+α】熱処理について
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※2023年9月19日に加筆修正致しました。
皆さま、こんにちは。群馬県高崎市にある(株)三和鍍金の武藤です。
今回は【基礎中の基礎!+α】熱処理についてということで解説していきます。
弊社では50種類を超える表面処理の取り扱いがございますのでお気軽にお問い合わせください
熱処理は表面処理の一種で、素材に様々な効果をもたらします。
「熱処理」という言葉は知っているけど
実際どんな効果があるのかわからない方や熱処理の種類までは分からない方、
この際に分からない点を解消しておきましょう。
熱処理を知らない方は勿論のこと、何となくわかるよって人も是非ご覧になって下さい。
この記事を見て頂くと基礎的な知識は勿論のこと、
熱処理についてのもやもやが解決出来ると思います。
以下では「鋼材」という言葉を使用しておりますが関連記事として
鉄と鋼材の違いについて解説した記事もありますのでそちらもご覧になって下さい。
それでは行ってみましょう。
熱処理とは
熱処理とは対象物に熱を加え冷ますことで性質を変える処理とされています。
主に金属(鋼材)に熱を加える事で組織の構造を変態させることです。
要は柔らかいものを硬いものにします。
目的としては耐摩耗性を上げたり、強度を増したりすることです。
形を変化させたくないものに用いります。
例えば包丁は熱処理をされている代表的なものです。
包丁が硬くなく柔らかくて、ふにゃふにゃしていては色々なものが切れず話になりませんよね。
そこで熱処理をすることで硬くしているのです。
より分かりやすくすると「針金」がありますよね。
針金は柔らかく曲げたい方向へすぐ曲がりますよね。
仮に針金を熱処理したあとに曲げるとポキッと折れてしまいます。
熱処理を加える事で靭性が無くなり、硬くなるためです。
熱処理の種類
「熱処理」と一括りになっていますが実は種類があるのです。
そこで、工法の違う4つを紹介して行きます。
1.焼入れ
金属を組織の構造が変態する温度(一般的には600~800℃程度)まで熱を加え
急速に冷却することで硬度や耐久性を上げる処理になります。
ここでポイントなのは
焼入れといいますが焼入れと冷却はセットになります。
しかも組織構造の変態が起きるのは焼入れした際では無く、冷却した際になります。
なんとなく熱を加える事で硬くしてるイメージがあると思いますが
熱を加えて「冷ます」ここが重要なのです。
焼入れは鋼を硬くするということですが
硬度を決めるのは主に鋼に含まれる炭素量で決まります。
よって焼入れをすると組織構造が変わってきますので物質が硬くなったりしているのです。
しかし、鋼材で炭素含有量が少ないものは焼き入れを行なってもあまり硬くなりません。
ですので場合によっては焼入れよりもこれから説明する「焼ならし」をする場合もあります。
2.焼き戻し
焼き戻しは、1.焼入れと並行して行う事が多いです。
焼き入れ、又は焼きならしを行った鋼の硬さを軽減し、粘性を高めるために行う熱処理になります。
「硬くなりすぎたなぁ・・」「もう少し柔らかくしたいなぁ・・」
では、調整をしましょう!
そんな時こそ焼き戻しの出番です。
焼き戻しは焼入れをした処理物に対し組織をより安定的にすることを目的とします。
もう一度熱を加えて靭性を高めるのです。
この際は焼入れの時ほど高温にせず200℃くらいで行います。
そして冷却方法は水冷が適していることもありますが空冷になります。
空冷とは空気で冷ます事です。
要は自然に冷めるまで待つという事です。
焼入れの冷却は水や油等で急激に冷やすことに対し焼き戻しは空冷でゆっくりと冷ましていくのです。
これは組織をより安定させることに適しています。
ゆっくり時間を掛けて調整をしていくといったところでしょうか。
3.焼ならし
焼ならしとは850℃程度で熱を加えた後に急冷せずに空冷を行います。
内部組織を安定させることが目的になります。
例えば熱処理後の加工で溶接する際に溶接した箇所は高温になりますが
その際に内部組織がバラけてしまいます。
しかし一旦、焼ならしをすることで均一な組織にさせることが出来るのです。
そして綺麗な組織構造のまま、焼入れをしたり切削のような加工をするのです。
不均一な組織を持つ鋼材を焼きならしすることで機械的性質を向上させることができます。
そうすることで組織を綺麗に保ちながら製品となるので付加価値が高い製品が出来上がります。
4.焼きなまし
焼きなましとは一度、焼入れをして硬くなってしまったものを元に戻す役割があります。
要は鋼を柔らかくすることを目的としているのです。
焼き入れをして硬くなったものを再度高温の熱を加える事で元に戻すことが出来ます。
元の組織構造に戻すことで切削、鍛造、プレス等の加工をしやすくなります。
冷却方法は急冷はしないで炉の中でゆっくりと冷やしていきます。
ここで整理をします。
1.焼き入れ→素材の硬さや強度を上げる :硬くなる
2.焼き戻し→焼入れ後に行う事で硬度や粘性の調整を行う :硬くならない
3.焼ならし→内部組織を安定させることで機械的性質を向上させる :硬くならない
4.焼きなまし→焼入れした対象物の性質を元に戻し、機械加工をしやすくする :硬くならない
よく似ていていまいち分かりづらいと思った皆さんここでポイントを抑えておきましょう。
違いとしては冷ます時に急冷なのか空冷なのか、硬くなるのか硬くならないのかに着目しましょう。
それぞれの目的に応じた熱処理方法があるのです。
表面処理における熱処理品への対応
熱処理後に表面処理を行う際には注意が必要です。
それは、熱処理を行う事によって素材の組織が変化していることは皆さんお分かり頂けたと思います。
熱処理品はめっき不具合が起きやすいのは事実です。
熱処理の種類がたくさんありますから、全てに対応というのは難しいこともございます。
炭素鋼における水素脆性や熱処理を行う事での
メッキ被膜への影響などがありますので注意が必要になります。
メッキ後に熱処理を行うパターン、めっき前に熱処理を行うパターンと様々あります。
試作や対応可否も含めて当社では対応致しますので宜しくお願い致します。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は【基礎中の基礎!+α】熱処理についてお話してきました。
熱処理によって鋼の組織構造が変化するという一番大事な部分はお分かり頂けたと思います。
性質を変態させることでそれぞれに適した機能を生じさせています。
こういう用途で使いたいから素材そのものに硬度を持たせたい。
加工しやすくしたいので鋼を柔らかくしたい等の目的に応じて鋼の性能を調整出来るのです。
熱処理には大きく分け4種類存在することを前述致しましたが、
それぞれの工法にどのような役割があるかを理解しておくことで
製品への熱処理方法を選定する際にも大きく役立ちます。
熱処理においても理解が深まることで製品の機能を最大限に発揮することが出来るので
新たな付加価値を付ける事が出来るかもしれません。
執筆者プロフィール
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株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
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