硬質金メッキとは?軟質金メッキとの違いやメリット・デメリットを解説
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金属や樹脂の表面を金でコーティングする金メッキは、電子部品やアクセサリーなどの分野で利用されています。
金は導電性、ボンディング性に富み、酸やアルカリに強いことから耐食性にも優れていますが、柔らかくキズがつきやすいことがデメリットでした。
その欠点を補うため開発されたのが、金にほかの金属を添加して処理する「硬質金メッキ」です。
こちらの記事では硬質金メッキの特徴や軟質金メッキとの違い、メリット・デメリット、種類について解説します。
三和鍍金では、金メッキをはじめとした50種類以上の表面処理を取り扱っています。
YouTubeではそのうち24種について一挙に開設した動画も公開しています。こちらもあわせてご覧ください。
目次
硬質金メッキとは
硬質金メッキは、硬度が高く摩耗に強いメッキで、熱伝導や耐食性に優れています。
以下では、硬質金メッキの特徴や軟質金メッキとの違い、メリット・デメリットについて解説します。
特徴
硬質金メッキとは、金にほかの金属を添加して行なうメッキ処理のこと。
金の純度は99.5~99.7%程度で、添加する金属はおもにコバルトやニッケルです。場合によっては、鉄やヒ素を使うこともあり、用途によって加える金属の種類や量が変わります。
色に大きく差がでることはありませんが、コバルトを添加したものは赤みを帯びた金色、ニッケルとの合金では白っぽい金色になります。
純金を使用する軟質メッキと比較して、硬度が約2倍、耐摩耗性は約3倍と耐久性が高いことが特徴で、コネクタやプリント配線板、電気接点などの電子部品が主要な用途です。
硬さは処理方法によって異なりますが、軟質金メッキがHv50~100であるのに対し、硬質金メッキはHv150以上が目安となっています。
耐久性のほかにも、ボンディング性、導電性、熱伝導性にも優れています。
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軟質金メッキとの違い
軟質金メッキと硬質金メッキの大きな違いは硬度ですが、接触抵抗性にも違いがあります。
純度が99.9%以上の金を使用する軟質金メッキは接触抵抗性が低く、ボンディング性の高さが要求される半導体分野では、軟質金メッキが利用されることが多いです。
ただし、硬度が低くキズがつきやすいため、スイッチのような耐摩耗性が要求される場面には硬質金メッキが採用されます。
軟質金メッキは装飾用金メッキとも呼ばれ、アクセサリーや仏具など見た目を美しくする目的で使用されることの多いメッキです。
一方で硬質金メッキは、電子部品や自動車分野など、導電性や耐久性が必要な工業用途で使われます。
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【電気的特性に優れたメッキの種類 】5つの特性別にメッキを紹介!
メリット:導電性と耐食性が高い
金メッキは導電性の高さがひとつの特徴ですが、導電性だけで見れば金よりも銀の方が優れています。
しかし、銀は空気に触れると酸化や硫化が起きるという特徴を持ちます。
酸化膜や硫化膜ができると、接触不良につながるため、耐食性が必要な電子部品には、酸化に強い金メッキが使用されるのです。
デメリット:剝がれやすい
金メッキはもともと衝撃によって剥がれやすい性質があるため、硬度が高い硬質金メッキにおいても強い衝撃を与えないよう、取り扱いには注意が必要です。
成膜処理の段階で作業を中断したり、熱処理に問題があるとメッキに膨れや剥がれが生じることもあります。
硬質金メッキの種類
硬質金メッキは、処理方法によっていくつか種類があります。
以下では、電解硬質金メッキと無電解硬質金メッキについて解説します。
電解硬質金メッキ
電解硬質金メッキは、電気を流すことでメッキの皮膜が形成される処理方法です。
パーツをメッキ液に入れ、電流を流すと表面にメッキ膜がつきます。リード線が必要なことから、微細な配線や高い密度が要求される用途への対応は難しくなっています。
無電解メッキに比べてメッキ浴の管理が容易で、価格は比較的安価です。
おもな電解硬質金メッキの種類
- ● シアン系金メッキ:毒性があり取り扱いには注意が必要だが、厚付けが可能
- ● ノーシアン合金金メッキ:シアン系に取らべて毒性や攻撃性が低い
- ● アモルファス金合金メッキ:薄膜化が可能
電気メッキの仕組みについてはYouTubeでも解説しています。
こちらもあわせてご覧ください。
無電解硬質金メッキ
無電解硬質金メッキは、電気を使わない表面処理方法で、複雑な形状のパーツにも均一な厚みで成膜できます。
化学反応によって皮膜を形成するため、プラスチックのような電気を通さない素材にも処理が可能。
析出できる膜の厚さに限度があるものの、寸法公差の厳しいパーツに適した処理方法です。
ただし、電解メッキに比べて成膜に時間がかかる、メッキ浴の管理が難しいといったことから、処理には知識と技術が求められます。
硬質金メッキの価格
硬質、軟質ともに、金メッキはほかのメッキに比べて高価な表面処理方法です。
また薄メッキよりも厚メッキの方が金を消費することから、厚メッキの方がコストは高くなります。
金の相場によってもメッキの価格は変動するため、同じパーツに同様の硬質金メッキを施しても、金の価格が高騰しているときは値段が高くなることがあります。
【まとめ】金メッキのご相談は三和鍍金まで
硬質金メッキのまとめ
- ●金にコバルトやニッケルを添加した合金で、硬度が高い
- ●金の純度は99.5~99.7%程度
- ●導電性、熱伝導性、耐食性、ボンディング性に優れている
硬質金メッキは、金の柔らかさをほかの金属で補うことで耐久性を高めたメッキ技術です。
電解、無電解と2つの処理方法があり、素材や用途にあわせた対応が可能となっています。
三和鍍金では、メッキ、塗装などの表面処理や分析、剥離事業を行なっています。
最小1ケの小ロットから対応し、納期やコストも柔軟に対応いたします。
他社で断られてしまった方も、ぜひ当社までご相談ください。
執筆者プロフィール
- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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