【簡単解説】ウィスカって何?
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※2023年9月21日加筆修正致しました。
群馬県高崎市にて表面処理を営んでおります、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
今回は錫メッキにおいてよく聞く、「ウィスカ」についての記事です。
錫メッキに馴染みがなければ、聞いたことがない方もいらっしゃるかもしれません。
簡単に解説していきます。
錫メッキとは
他の電気メッキと同じく、金属である錫を溶かしたメッキ溶液に製品を浸漬し、電気をかけることで皮膜を形成させます。
食器から電子部品まで、多岐に渡って用いられている高機能メッキのひとつです。
他の金属より毒性が低いため、食器にも採用されているというわけです。
弊社でも実際に銅製やアルミ製のBUSBAR(電子部品に用いるもの)に錫メッキをおこなうことはよくあります。
また、錫メッキは大きく分けて光沢錫メッキと半光沢(無光沢)錫メッキと二分されます。
※どちらも弊社にて承っております。
はんだ性が高いことで有名ですが、それ以外にも美観向上や摺動性向上を目的に処理が行われることも多くあります。
詳細については下記コラムをご覧ください。
ウィスカとは
そんな高機能な錫メッキですが、よく問題になるのが今回のテーマでもある「ウィスカ」という現象です。
ウィスカとは何なのでしょうか。
ウィスカとは錫メッキ後にできてしまう「ヒゲ」のような突起物のことです。
直径1~2μm、長さ10μm~数mmほどの非常に小さな(我々めっきの界隈だとそこまで小さく感じませんが)ヒゲです。
※実はwhiskerという英単語は犬や猫などのヒゲを指す言葉なのです。
では、なぜこのウィスカが問題視されるのか。
その理由は、「人命にかかわってくるから」です。
錫メッキは良好なはんだ性をもつため、基板内部などによく採用されます。
当たり前ですが、基板内部の電気経路は技術者によって完全にコントロールされて作られますよね。
しかし、ここでウィスカが発生し、その成長が続いて技術者が意図していない場所に接触すると
短絡、いわゆるショートが起こる可能性があります。
ショートについての詳細な解説は割愛しますが、「電気回路に異常が発生し、瞬間的に電流が大きくなること」と考えていただければよいかと思います。
電流が大きくなることで何が起こるかというと、システムダウンや機器異常、
また電流の大きさと熱量は比例するため、膨大な熱負荷がかかることで火災につながる恐れもあるのです。
少し調べてみると実際にウィスカが原因で起こったと推定されている事故もあります。
先ほど「人命にかかわる」と申し上げましたが、あながち間違いでないことがお分かりいただけたでしょうか。
したがって、ウィスカ対策は重要な管理項目だと言えます。
ウィスカの原因と対策
さて、そんなウィスカはどうして発現するのでしょうか。
実は、ウィスカの原因について根本的なメカニズムは未だ解明されていないとされています。
一般的に有力とされている原因は下記の通りです。
・金属化合物の拡散
・ガルバニック腐食
・各応力
※ガルバニック腐食についてはこちらもご参照ください。 ※応力についてはこちらもご参照ください。
ウィスカは自然成長するものですが、成長が促進される環境はある程度わかってきています。
ですが、環境要因はいくつもあるため、使用制限と考えるとあまり融通が利かなくなるのも嫌ですよね。
では、一般的にウィスカの対策としてはどのようなことがなされているのでしょうか。
最も簡単かつ一般的なのは下地メッキを施すことです。
ニッケルメッキや銅メッキが通例的に用いられ、ウィスカの成長抑制に一定の効果が認められています。
また、スズ単体のメッキではなく、スズ合金メッキにしてしまうこともウィスカ対策には有効です。
他の金属と合金化させることにより、ウィスカの成長を抑えることができます。
さらに、熱処理(アニール処理)を行うことでもウィスカを妨げることが可能です。
※ブライトアニールについてはこちらをご参照ください。
いかがだったでしょうか。
弊社では錫メッキ(光沢・無光沢)を常時扱っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
対応可能寸法等、詳細は以下リンクよりご覧いただけます。
是非一度ご高覧ください!
蛇足~ブリキとトタン~
皆さんはブリキって馴染みがありますか?
私は正直なところあまりありません。
が、ブリキのおもちゃなどノスタルジックな雰囲気に趣を感じることはあります。
ブリキって何なのでしょうか?
ブリキとは、鋼板(鉄の板)に錫メッキを施した素材のことを指します。
錫メッキされた鉄の板、ですね。
柔らかいというスズの特性上、耐久力はあまり高くありませんが、
スズは摂取されてもすぐに体外に排出されるという点でおもちゃなどに採用されていたようです。
また、同じような立ち位置にトタンという素材があります。
トタン屋根の○○、なんてフレーズ聞いたことがありませんか?
トタンとは、鋼板に亜鉛メッキを施した素材のことを指します。
安価かつ亜鉛メッキの防錆力をもっているため、一時期爆発的な普及が起こりました。
ただ、亜鉛メッキの防錆力は犠牲防食作用という機能によるもので、
これは素地の腐食をメッキ皮膜が取って代わって受けるというようなものです。
※犠牲防食作用の詳細はこちらからご参照ください。
したがって、定期的なメンテナンスをしないと、トタンも防錆力を失って錆びてしまいます。
トタンといえば「錆びやすい」というイメージがあるかもしれませんが、
メッキの特性を考えてメンテナンスをしてあげれば、耐用年数は20年近くにもなる優秀な鋼材なのです。
執筆者プロフィール
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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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