【金属の特徴】鉛の特徴や用途とは?基礎知識をまとめ!
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鉛は古代から現代に至るまで、人の暮らしを支えてきた金属です。クレオパトラの化粧には鉛が使われていたとも言われています。
日本でも、江戸時代には貨幣や瓦屋根として利用され、現在では自動車のバッテリーや病院のレントゲン室の建材など生活に欠かせない存在となっています。
しかし近年、人間や動物の体内に蓄積すると中毒性を引き起こすことから、さまざまな分野で鉛フリー化が進められています。
こちらの記事では、鉛の特徴や毒性、鉛フリー化が進む素材、鉛が欠かせない製品について解説します。
三和鍍金では鉛を使わないカチオン塗装を取り扱っています。YouTubeに作業工程を解説した動画もありますので、こちらもあわせてご覧ください。
【カチオン電着塗装とは?】製品を錆から守る!プロが解説!【三和鍍金】
目次
【鉛とは】特徴や製錬方法を解説
鉛の歴史は古く、紀元前から長く人々の暮らしを支えてきました。
以下ではまず、鉛の特徴や製錬方法などの基礎知識について解説します。
鉛の特徴
鉛 元素記号:Pb 原子番号:82
鉛は柔らかく展性があり、打撃や圧力を加えても壊れにくいことが特徴の金属です。
見た目は青白い銀色でツヤがありますが、湿気によって表面が酸化すると黒ずんで光沢が失われます。
しかし、酸化被膜によって内部にサビが侵食することを防ぐというメリットを持っています。
また鉛は融点が327.5℃と、ほかの金属に比べて低くなっていることも特徴としてあげられます。
金属の融点の例
- ●鉄:1536℃
- ●金:1064.43℃
- ●銅:1084.5 ℃
- ●アルミニウム660℃
- ●鉛:327.5℃
融点が低く加工がしやすい特徴を持ち、価格も安いことから鉛は幅広い分野で使用されてきました。
製錬方法
鉛の製錬方法は以下の2種類があります。
- ●乾式製錬
- ●湿式精錬
乾式、湿式いずれの製錬方法でも、原料である方鉛鉱を焙焼して酸化鉛にします。
乾式では、粗鉛をコークスと共に炉に入れて溶錬し、地金を作ります。
湿式の場合は水溶液の中で電解製錬を行ないます。
鉛の毒性
鉛が体内に蓄積されると、頭痛や胃腸障害、貧血などの中毒症状を引き起こします。
鉛を摂取する原因としては、水道水やガソリンの排気ガス、はんだ付けの際に発生するヒューム(煙)があります。
ローマ帝国の時代から、鉛は水道管として利用されてきました。
日本においても水道管として長く利用されてきましたが、鉛中毒が問題視されるようになり、
現在は塩化ビニールやステンレス鋼製のものに交換が進められています。
ガソリンのハイオクは、かつて鉛を加えていました。
鉛を添加することで、異音や振動が発生する「ノッキング」と呼ばれる現象を防ぐ効果があったためです。
しかし排気ガスを吸い込むことで鉛を一緒に吸入してしまい、鉛中毒の原因となることが知られるようになったため、使用が禁止されました。現在は無鉛ガソリンが販売されています。
はんだ付けでも同様に、鉛をはんだごてで溶かした際に発生する煙(ヒューム)を吸い込むことで鉛中毒を引き起こしてしまうため、鉛フリーはんだの開発・使用が進められています。
利便性の高さから、鉛は水道管、蓄電池、おもり、塗料、化粧品、ガソリンの添加物など多くの分野で利用されてきました。
しかし現在は鉛フリーが進んでおり、用途は限定されてきています。
鉛フリー化が進む素材
鉛は加工性が良く安価なことから、さまざまな分野で使用されてきました。
しかし、その毒性が知られるにつれ規制が進み、現在では限られた用途にのみ利用されています。
以下では、鉛フリー化が進められている素材について解説します。
水道管
鉛は、ローマ帝国の時代から水道管として使用されてきた鉛管は、近年まで日本でも使われてきました。
現在は水道管から鉛が溶けだすこと、水質基準で鉛の基準値が見直されてきたことを受けて、代替素材でできた水道管との交換が進められています。
一方で令和3年の大阪府羽曳野市の調査では、3,344件の住宅でいまだ鉛の水道管が使用されているとの結果が出ており、すべての水道管を交換するにはまだ時間がかかりそうです。
はんだ
金属の接合に用いられるはんだは、鉛から製造されたものが主流でした。
鉛とスズからなる合金は、183℃と低温で溶け、濡れ性が良いことが特徴です。
しかし高温のはんだごてで鉛合金を溶かした際に発生する煙(ヒューム)を吸い込むことで、鉛中毒になる事例が確認され、鉛はんだが問題視されるようになりました。
また、鉛合金をはんだに使用した電子部品が廃棄された際、土中に鉛が流出することが環境汚染になることもあわせて、鉛の使用を制限する動きにつながっていきました。
そこで、スズや銀を主成分とする鉛を使わないはんだが開発され、現在のはんだの主流となっています。
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塗料
鉛は防腐効果を持つことから、橋や高速道路などの橋脚に使う塗料に、サビ止めとして混ぜられてきました。鉛を加えた塗料を使用すると、腐食が起こりにくく建材が長持ちする一方で、鉛中毒になる作業員が出てしまう問題がありました。
そこで日本塗料工業会では、会員企業が製造・販売する塗料から鉛フリー化を促進する活動を行ない、2020年3月に達成。現在は代替素材を使用した塗料の開発が進んでいます。
ただし、古い建造物や遊具などには鉛フリー化以前の塗料が使われており、注意が必要です。
現代でも使用される鉛製品
各分野での鉛フリー化が推進されていますが、まだ鉛が必要とされる場面もあります。
以下では、鉛が使われている製品について解説します。
蓄電池(バッテリー)
鉛バッテリーは自動車や重機の電源として欠かすことのできない部品です。
蓄電池には鉛のほか、リチウムイオンやニッケル水素を使用したものもありますが、鉛がいまだ主流となっています。
鉛フリーが進む中でも、蓄電池に鉛が使用される理由としては、
- ●価格が安い
- ●メンテナンス性が良い
- ●リサイクルしやすい
などの理由があります。
ハイブリッドカーでは、駆動用のメインバッテリーとしてリチウムイオン電池やニッケル水素電池が使用されていますが、安定的な電圧確保のためには補機用バッテリーとして鉛蓄電池の搭載が不可欠です。
放射線の遮蔽材
病院のレントゲン室やCT室では放射線を使用するため、遮蔽材として鉛が壁や天井、医療スタッフのエプロンなどに使用されています。
鉛板、鉛テープ、鉛球、などさまざまな形の製品があり、働く人々の安全確保に役立っています。
鉛は放射線にさらされても放射化が起きないため、医療現場や研究所などで欠かせない素材です。
【まとめ】鉛フリーの表面処理のご相談は三和鍍金まで
鉛の特徴まとめ
- ●鉛は柔らかく融点が低いため、加工がしやすい金属
- ●酸化被膜を形成するため、サビに強い
- ●安価で重宝されてきたが、毒性があるため鉛フリー化が進んでいる
鉛の特徴や毒性、鉛フリー化が進められる理由について解説しました。
三和鍍金では、鉛を使わないカチオン塗装をはじめとして、約50種類の表面処理を行なっています。ご要望に応じてメッキや塗装の検査までワンストップで行うことも可能です。
ぜひ一度お問い合わせください。
執筆者プロフィール
- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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