【基礎中の基礎!+α】脱脂洗浄について Vol.1~めっき工程における水系脱脂洗浄~
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※2023年9月19日に加筆修正致しました。
群馬県高崎市にある(株)三和鍍金の武藤です。
今回は金属部品の脱脂洗浄についてご説明させて頂きます。
対応可能寸法など詳細は下記リンクよりご覧になって下さい👇
表面処理において「脱脂」はまさに基礎中の基礎及び最重要工程だと言えます。
表面処理は前処理で製品の7割は決まると言われて程重要です。
不具合が出た際も真っ先に前処理工程での原因を疑った方が良いと言っても過言ではありません。
そんな気になる前処理での「脱脂」について詳しく解説していきます。
脱脂に関して動画でご覧になりたい方は、Official YouTube Channel「【メッキの強み】第一弾 前処理編【三和鍍金】」の動画内で出ていますのでご覧になってください。
脱脂とは
皆さん一度は聞いたことがあると思いますが脱脂とは油を取り除くことを言います。
身近なところで言うと皆さんスマートフォンの表面保護シールを取り換えた経験はおありでしょうか?
シールを貼る前に表面のゴミ、汚れ、油分を取り除きますよね?
それ用の脱脂綿なんかも入ったりしています。
これはシールを貼る際にゴミ、汚れ、油分が残っていると密着が上手く取れなかったり
汚れが残ってしまいます。
これと同じで表面処理をする前での脱脂とはメッキをする前に素材を綺麗に洗浄しないと
次にするメッキ層が上手くのらないよ~と言う事なのです。
下準備である脱脂工程はとても重要なのです。
油と脱脂剤の相性
我々、表面処理業者に製品を持ち込んでいただく際には、
防錆目的や製品加工時(プレス、切削、板金)に必要な油、更には汚れ、ゴミがたっぷりついてきます。
これを綺麗に落とさなければいけないのです・・・汗
ここで重要なことをお伝えします。
製品加工をする際に材質や加工方法によって油の選定をすると思いますが
油の選定をするように「脱脂剤」もその材質や表面処理方法に合った選定を行う事が重要です。
よくお客様からこんなことを言われます。
「そんなにべとべとしてないから除去できるよね」「さらさらしてるのに脱脂不良は無いのでは?」
確かに、私もそんな気がしていました。見た目ではそうですよね。
しかし、それは実際は違うのです。
実はべとべとしているから、たっぷりついているから落ちづらい、
さらさらしているから落ちやすいではないのです!
油と脱脂剤にも相性というものがあり、べとべとたっぷりついていても簡単に落ちてしまうもの、
さらさらしているのに脱脂不足になってしまうケースは非常に多いです。
ケースは様々ですが、まずは表面処理屋さんの脱脂剤と依頼した製品に付着している油の相性を確かめてみるのも
トラブルを防ぐポイントになります。
このように油と脱脂剤の相性も非常に大事なのです。
脱脂工程の種類
脱脂工程の種類はたくさんあり、材質や目的によって異なります。
種類を羅列致しますと
「溶剤洗浄」「エマルション洗浄」「アルカリ浸漬洗浄」「アルカリ電解脱脂洗浄」「陰極電解洗浄」「陽極電解洗浄」「PR電解洗浄」「超音波洗浄」「酸洗い洗浄」「酸電解洗浄」等が挙げられます。
このようにたくさんの方法があるのですが今回は主流の脱脂工程を初め、当社でも取り扱いがあるものを抜粋して詳しく取り上げさせて頂きます。
アルカリ浸漬脱脂
アルカリ浸漬脱脂とは水を主体とする炭酸ソーダ、苛性ソーダ等を溶かしアルカリ性溶液を洗浄液とし、浸漬することで脱脂を行う方法です。洗浄方法として最も広く用いられております。
加温することが必須になっており温度の上昇、アルカリ濃度によって大きく脱脂効果は異なります。
扱いがしやすく脱脂効果も高い反面、非鉄金属素材に対してアルカリ成分が腐食させてしまうのでPH(ペーハー)の管理に注意が必要です。また、温度管理も大切であり高温になりすぎないようにすることも大切です。
単純に濃度、温度を上げれば良いという訳ではないのです。
アルカリ電解脱脂
アルカリ電解脱脂とはアルカリ性溶液の中に製品を浸漬し電解を行う事で金属表面を洗浄する脱脂になります。
ここで使用するアルカリ性溶液はアルカリ浸漬脱脂の溶液と大差がりありません。
電気を使用するかしないかに違いがあります。
特徴として電解反応が起こることでガスが発生し、製品のカシメ部やピンホール内部まで洗浄することが出来ます。
しかしながら電気を使うデメリットとして例えばパイプ内部等、電気が行き届かない点が挙げられます。
※補足としてこちらの記事もご参照ください。
これを解消する為には補助極や揺動、或いは超音波洗浄を用いりパイプ内部の汚れや油分を出してあげる必要があります。
酸電解洗浄
酸電解洗浄とは酸性溶液を洗浄液とし電解する方法です。陰極で電解するものと陽極で電解するものがあります。
※陰極法=被処理物を陰極(-)にし水素ガスを発生させ洗浄する方法
※陽極法=被処理物を陽極(+)にし酸素ガスを発生させ洗浄する方法
アルカリ脱脂のように洗浄することが目的ですが特徴として製品の酸化スケールや錆びを除去することが出来ます。
※酸化スケール(黒皮)についてはこちらの記事もご参照ください。
しかしながら先程、アルカリ電解脱脂の説明の際にパイプ内部の話をさせて頂きましたが同様に内部までは除去がしきれません。
また、錆びや酸化スケールの程度によっては除去することが難しいのでその際は別工程での前処理を行う必要があります。
電気を使う事で短時間で効率よく洗浄を行えるのも特徴の一つです。
PR電解洗浄
PR電解洗浄ですが電流の方向を周期的に逆転させ被処理物に陰極電解と陽極電解を交互に行うものです。
そもそも「PR」とは何でしょうか?
PRとは periodic(定期的に) reverse(逆行する)の頭文字をとっており定期的に逆転するという意味です。
すなわち電解の+、-を交互に切り替えるということです。
陰極電解と陽極電解を交互に行うという事は物凄い洗浄効果が高そうですね。
まさにこれがPR電解洗浄の特徴となっており陰極電解と陽極電解のそれぞれの短所を補いつつ長所を更に活かすことが出来るのです。
よって洗浄速度は速く、効果は絶大なのです。更にはスケール除去や錆び取りの効果も持ち合わせています。
上記で挙げた以外にも種類のとこで説明したようにたくさんの脱脂工程がございます。
その他の脱脂工程についても随時更新していきますので是非ご覧になって下さい。
弊社で扱っている金属部品の脱脂洗浄について、詳細はこちらからご覧くださいませ。
今回の内容をまとめてみました。
執筆者プロフィール
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株式会社三和鍍金に入社後、経営難に陥っていた会社再建に取り組む。
経費削減、業務改善、人材育成に取り組み1年でV字回復させる。
その後、営業手法の業務改善を行い、売上高増加、年間新規取引100件を達成
柔軟な発想や行動力を持ち味に現在は表面処理を通しての新規事業に着手中。
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