【窒化?】イソナイト処理ってなに?
こんにちは。
群馬県高崎市にて各種表面処理をおこなっております、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
さて、皆さん「イソナイト処理」って聞いたことがありますか?
実は私も最近初めて知り、協力工場様にお話を聞く中でその内容を理解しました。
聞き馴染みのある方は少ないのではないかと思います。
今回はそんなイソナイト処理がどんな処理なのか、詳しく解説していきます。
目次
イソナイト処理ってなに?
イソナイト処理とは、「塩浴軟窒化処理」です。
…?
「ふむふむなるほど、塩浴軟窒化処理のことなのか」と納得できる方はいないと思うので、
「塩浴軟窒化処理」がどういった処理なのかを詳しくみていきましょう。
ただ、漢字になるだけで理解のしやすさが格段に上がる感じがしますね。
まず、塩浴軟窒化(イソナイト)処理は、熱処理という括りの中の、窒化処理という括りのさらにその中の軟窒化処理という括り、そしてさらにその中にあります。

熱処理・窒化処理・軟窒化処理については下のパラグラフにて解説していますので、ご覧ください。
大枠の部分からだんだんとみていきましょう。
熱処理ってなに?

熱処理とは金属表面処理の一種です。
熱を追加的に加えることで金属の表面状態を変性させ、様々な良い効果を発揮させます。
熱処理の並列としては研磨・塗装・めっきなど、他の表面処理が該当します。
熱処理について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
弊社では各熱処理を扱っておりますので、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
お問い合わせはこちら
窒化処理ってなに?

窒化処理とは、熱処理の一種になります。
金属の表面に窒素を浸透させ、硬度や他の性能を上げるという処理です。
そもそもの処理仕様がめっきや塗装と異なるため、硬度を上げられる処理は複数あるものの
窒化処理にしかないメリットも複数存在しています。
並列の関係には焼き入れや焼き戻し、焼きなましなどが該当します。
窒化処理について、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。
軟窒化処理ってなに?

そして、軟窒化処理とは窒化処理の一種です。
通常の窒化処理は硬化層が厚く(30~300μ)、また表面の硬さも比較的硬いのですが、
その処理時間が大変長く20時間以上かかってきます。
処理時間が長いということは納期やコストも必然的に増加してしまうということです。
軟窒化処理は硬化層を薄く(8~30μ)することで1~3時間ほどの短時間で処理が完了するため
納期とコストを見据えた大量生産に適しています。
軟窒化処理の並列としては通常の窒化処理が該当します。
塩浴軟窒化処理ってなに?

長くなりましたが、最後です。
塩浴軟窒化処理とは軟窒化処理の一種で、並列としてはガス軟窒化処理などが挙げられます。
塩浴軟窒化処理が500~600℃のソルトバスに製品を浸漬することで処理をおこなうのに対し、
ガス軟窒化処理は500~600℃のアンモニアガスと窒素の複合雰囲気中で処理をおこないます。
ガス軟窒化処理は膜厚が比較的薄く(8~20μ)、特に使用する薬品の毒性を気にした公害防止対策は必要ありません。
ただし、ステンレスへの処理ができません。
対して塩浴軟窒化処理は膜厚が比較的厚く(10~30μ)、ステンレスへの処理も可能です。
ただし、こちらは使用するシアン酸塩の関係で公害防止対策が必要となります。
どの部分にフォーカスを当てるかで選ぶべき処理が異なってきます。
イソナイト処理のメリット・デメリット
イソナイト処理をまとめると、以下のようになります。
・金属の熱処理の一種で、500~600℃のソルトバスに浸漬することで処理
・表面が硬化し、耐摩耗性や耐食性が上がる
・膜厚は10~30μで、処理時間が短いため大量生産向き
・ステンレスを含め、ほとんどの鋼種に処理可能
・公害防止対策が必要
※赤字がメリット、青字がデメリット
イソナイト処理とタフトライド処理の違いは?
タフトライド処理って聞いたことはありますか?
これ実は、「イソナイト=タフトライド=塩浴軟窒化処理」という認識で差し支えありません。
ここには下記の動画でも触れているような商標の絡みがあり、実際のところはすべて同じ処理として認識されることが多いです。
蛇足~シーズニングとイソナイト処理の違いは?~
少し本題とはずれてしまいますが、最近話題のキャンプ関連の話で、
鉄のスキレットやフライパンにおこなうシーズニングという処理があります。
このシーズニングとイソナイトの違いについて、最後に触れておきます。
シーズニングとは、鉄のフライパンやスキレットなどが簡単に酸化しないよう、また調理の際に食材が鉄板に付着しづらいよう、黒皮と油によってコーティングするというものです。
詳しくはこちらの動画をご覧ください。
油のコーティングについては違うことが明白だと思いますが、この黒皮を生成する工程がたしかに熱処理の一種のような感じがありますよね。
ただ、上のコラムをご覧になってきた皆様はお分かりになるはずです。
「窒化処理ではない」ことに。
窒化処理はガスなどによって窒素を染み渡らせることで硬度を上げるというものです。
今回の黒皮は窒素をほとんど含んでいない、酸化鉄の皮膜です。
したがって、意図的に窒素を入れた窒化処理とは異なるものになります。
いかがだったでしょうか?
イソナイト処理の基礎についてお分かりいただけたかと思います。
弊社ではイソナイト処理の取り扱いもございますので、処理をご希望の方はお気軽にご連絡ください。
お問い合わせは下記ボタンからどうぞ。
それではまた次回!
PROFILE

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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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