【メッキできるの?!】磁気とメッキの関係
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皆様こんにちは!
群馬県高崎市にございます(株)三和鍍金 事務の根岸です!
今年も残り少なくなってきましたね…。あっという間ですね♩
毎日寒くて大変ですが、冬至も過ぎましたのでだんだんと陽が長くなっていくのを心待ちにしましょうねっ(^^)!
さて!今回は[磁気とメッキの関係]についてです。
弊社ではメッキ(銅ニッケルクロム)をしておりますが、たまに現場から「ウ“ィィィィ”-ン」とF1の車が通ったような音が聞こえてくることがあります。
この音、実はメッキ処理前の製品の磁気を抜いている音なのです。
磁気を抜く???ナニソレ???
……..ということで、磁気が及ぼすめっきへの影響について書いていこうと思います!
宜しくお願いします!
◆磁気って何?
さあ!そもそも磁気って何なのさ!ということですが、誰もが思いつく[磁石]を想像して頂ければ大丈夫です。‘磁石が物にくっついたり、反発したりすること’です。
小学校の理科の授業で勉強をしたN極・S極(別の極は引き合い、同じ極同士は反発し合う)です。
1つの磁石には必ずN/S極存在しますが、これを半分に割るとそれぞれにまたN/S極が存在します。
分子レベルに小さくなっても、逆に地球レベルに大きくなってもこの性質がなくなることはありません。
[地球は大きな磁石]と言われますが、北極<北>はS極・南極<南>はN極を帯びております。
方位磁針が北と南を指すようになっているのは方向を示す針が磁石になっており、北を示す針にはN極・南を示す針にはS極の磁気を帯びているからです。
【地球のS極と針のN極が引き合う=北】と、磁気は方向を示す役割を果たしております。
小学生の頃、理科が苦手な私はN極S極と方位磁石の関係が理解できず、この記事を書くまで方位磁石については頭の中から消し去っていたのですが、やっと!!理解することが出来ました(笑)
方位磁石に頼らない人生を送ってきた私は、勘に頼る方向感覚だけは研ぎ澄ますことができました。(そもそも日常で方位磁石使う事は中々ないと思いますが…笑)
また、直接磁石同士が触れなくても引き寄せ合ったり反発し合ったりする力が働く空間を<磁界>と言いますが、類似しているものが<電界>と言われております。
電界とは電圧のかかったものの周囲に発生する電気の流れです。
‘接触せずに働く力’という部分がよく似ている為、磁界・電界どちらかの単語を調べるとまとめて説明されていることがよくあります。
◆どうして磁気が発生するの?
では、この磁気。どうして発生してしまうのでしょうか?
1つ目は、磁気を帯びている物の近くに製品を置いておくと磁気の影響を受けるということです。
鉄のクギに磁石をくつけると、クギ自体が磁気を帯びた磁石になります。
そのクギだけでも他のクギ(鉄)を引き付けるようになるのです。このことを[帯磁]と言います。鉄は帯磁しやすい金属と言われております。
分かりやすい例でいうと、工具のドライバーの先です。
買ったときは何ともなかったのに、いつのまにかネジがドライバーの先にくっついていることありませんか?
また、「擦り合うと磁気が発生する」ともよく言われておりますが、正しくは鉄内部に存在している磁石の性質をもつ分子に動きにより変わります。
この分子が集まっている部分を[磁区]というのですが、製品に衝撃(叩く・擦る等)が与えられることにより元々バラバラだった磁区の向きが揃い僅かながら磁石のような性質が生まれていくのです。
テレビ・ラジオ・スマホ・パソコン・ハンドバッグの金具・磁気カードなど、磁気を帯びている物は日常によくあります。
腕時計がいつのまにか狂っている!ということがたまにありますが、それは多少なりとも上記の物等から磁気の影響を受けていることもあるようです。
2つ目は、製品を溶接する際に磁気が発生するということです。
1つ目は日常生活での話ですが、2つ目は製品の製造過程で起こることなので皆様の生活からは少し離れています。
製品を成型する際、部品と部品を繋ぎ合わせるのに溶接をすることがあります。
溶接の技法の1つに[アーク溶接]という電気の力を使って溶接棒でつなぎ合わせる方法があります。
‘溶接電流により発生する磁力で製品に磁気を帯びる’
これが溶接時に発生する磁気です。
弊社に入荷される製品で、元々ニッケルメッキ処理のみの製品がありました。
しかしいつからか、磁気抜き工程が追加されるようになりました。
磁気抜き工程が追加されるということは、当然コストもアップします。
「特に製法を変えたわけではないので、製品運搬の際に製品が擦り合って磁気が発生しているのではないか…?」と考える方もいらっしゃいますが、実は溶接の際に磁気が発生しているということもありえるのです。
◆磁気抜きしないでメッキできるの?
では、「磁気抜きするとコストが上がってしまうなら、そのままメッキは出来ないのですか?」という声が聞こえてきそうですが、、、先に答えを言うと‘そのままメッキは出来ます’です。
しかし外観不良になります。
磁気抜きをしてメッキした物と、磁気抜きをしないままメッキした物を見比べてみましょう。
磁気抜きしていない物の方は、角がガビガビしていることが分かりますね。
磁力は端(極)に強く出ること・メッキが付きやすいのが製品の端(外側)であることもあり、一部にこのような形で磁気抜きをしなかった影響が出ることになります。
このガビガビの正体は、メッキ浴前の前処理層の中に浮遊している不純物です。
通常、前処理をすることにより製品についているゴミや油、砂鉄などの不純物を落とすのですが、磁気が残っている部分には逆に不純物が吸い寄せられてしまい、そのままメッキ層へと進んでしまうのです。
実際に磁気がどのくらい帯びているのか、磁気を測るメーターを当ててみました。
針の振り幅がメモリ5以内であれば問題ないと言われております。
どうでしょうか。
磁気を帯びていないところはメモリ5以内にしか針が動かないのに対し、磁気を帯びているところはメモリ20~30までピューンと動いてしまいます。
ちなみに…磁石に近づけてみると、サクッと余裕でメモリ30超えます!(このメーターだと測定不能レベルです)
このようなメッキ不良を事前に防ぐためには、治具に掛ける前に[磁気抜き]という工程をします。(冒頭で伝えたF1のような音がするやつです!!!)
磁気抜きをする機械で1つ1つ製品を当ててから治具に掛けて、前処理→メッキ処理→検査という流れになります。
磁気抜き工程をはさむことでメッキ不良がなくなり良品として出荷ができるのです。
不良のまま出荷してしまい、‘やはりダメでした。やり直しです。’となると、剥離して磁気抜きしてさらに再メッキして…とコストが余分にかかってしまうので、ご注意下さい。
今回たまたま磁気抜きされていない製品が入ってきたので、写真で説明することができましたが、やっかいなことに磁気を帯びているかどうかは目視では分からないことです。
弊社のような表面処理業まで製品が納入されると、すぐにメッキや塗装の処理に入ってしまう為、製品が仕上がったときに初めて‘磁気帯びていたのか…’と目の当たりすることになります。
ありがたいことに、弊社に溶接した製品をメッキ処理依頼されるお客様は、溶接により磁気を帯びてしまうことを知っている方がほとんどですので、お持ち込み頂く際そのままメッキ処理を進められるようにしてくださっており、とても助かっております。
◆まとめ
磁気とメッキの関係性について書いてきましたが、いかがでしたでしょうか?
今回の記事を書くのに、友人のお子さんから小学校3年生の理科の教科書を借りて磁気について勉強してきました…笑
ちゃんと勉強してこなかった分が、大人になってきちんと返ってきました。
いいんです!方位磁石も読めるようになったので!!笑
磁気を帯びているだけで仕上がりにこんなにも差が出てしまうのか…とお分かり頂けたかと思います。
メッキ(銅ニッケルクロム)製品は外観に使用されることが多いです。
お客様のもとに届いてから気付くよりも未然に防ぎ、余計なコストもかけずに良品をお届けできるのが1番いいですね!
製品依頼の際に心配なことがあったら、お気軽にご連絡ください♩
今年も1年間、株式会社三和鍍金のホームページ・メッキコラムをご覧頂きありがとうございました。メッキコラムからの新規お問合せを頂いたり、気付くこともあったり。
私自身も皆様に日々助けられてきました。
ありがとうございます!
来年もたくさんのメッキコラムを更新していきますので、少しでも皆様のお力になれたら嬉しいです。
皆様良いお年をお迎えくださいませ(*^-^*)
ありがとうございました♥♡
執筆者プロフィール
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ウエディング・旅行業界で勤務後、株式会社三和鍍金に入社。
事務員として伝票発行や納期管理をする傍ら、サービス業で培った高いホスピタリティ(おもてなし精神)を活かし、三和鍍金に関わる全ての方々が気持ち良く過ごせるようなお客様対応を心がけている。
メッキについて初心者であることを活かし、「メッキ初心者の視点」で書いたコラムはいずれも高い人気を博している。
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