【JIS】プルオフ法とクロスカット法
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※2023年9月20日加筆修正致しました。
群馬県高崎市の表面処理業者、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
弊社では各種分析も取り扱っておりますのでお気軽にお問合せ下さい
今回は、カチオン塗装の密着性を確かめるために実際に弊社でも使っているクロスカット法を用いた碁盤目試験と
同様に密着性を測る試験法としてJISに規定されているプルオフ法についてまとめます。
できるだけ平易にまとめますので、是非一度ご覧になってください。
カチオン塗装について下記YouTubeやコラムも併せてどうぞ!
用語解説
まずはじめに、今回登場する用語の解説を行います。
凝集破壊
「接着接合物の破壊形態のひとつ。接着体の層内で起こる破壊を指す。」と言われても
なんですかそれは。
と私はなりましたので、かみ砕いてご説明いたします。
皆さんショートケーキを思い浮かべてみてください。
美味しそうなスポンジケーキの上にいちごが載っていますね。
そのいちごだけつまんでとってみると、いちごの下の生クリームが一緒にくっついてきたりそうでなかったりします。
ショートケーキにおける凝集破壊を図で示すとこんな感じです。
接着剤の生クリーム部分中央に破壊が起きて、上半分はいちごに付随しています。
界面破壊
上に倣い、ショートケーキに例えると界面破壊はこのようになります。
いちごが綺麗にとれて、接着剤の生クリームは少しもいちごに残っていません。
換言すれば「破壊」が起きているのはいちごと生クリームの境「界面」になります。
材料破壊
こちらも同様にショートケーキになぞらえますと、以下のようになります。
古いケーキだったのでしょうか。
接着剤の生クリームが固まってしまっていたため、いちごと一緒にケーキ自体がくっついて半分とれてしまいました。
被接着物に破壊が起きることを材料破壊と呼びます。
被接着物の凝集破壊という言い方もされます。
また、このようにいちごが破壊されてしまうパターンも材料破壊と言えます。
お分かりいただけたと思いますが、いずれも極端な例ですね。
ショートケーキに限らず、実際はこれらが複合的にさらに様々な程度で発現することの方が多いです。
定性的
表面処理に限らず、様々な業界で使われる用語です。
物事の状態を数字ではなく言葉や文字で表すことを指します。
たとえば企業の売り上げが急激に伸びたとしましょう。
さらに、それがお客様への丁寧な対応と営業活動の活発化によるものであったと仮定します。
これを
「A社の売り上げが急増した。顧客への丁寧な対応と営業活動の活発化が原因だと思われる」
とすれば、これは定性的表現と言えます。
定量的
上の「定性的」と対になる用語です。
物事の状態を言葉でなく具体的な数字で表します。
先ほどの例を定量的に踏襲すれば
「A社の売り上げが前年同月比で60%増加した。半期ごとの顧客満足度90%、月当たり新規顧客獲得件数5件を掲げ、さらにそれらを達成し続けたことが起因している」
となるわけです。
パッと見ですと、「定量的の方が具体性があっていいじゃないか」と思われるかもしれませんが、
分野や状況によっては定性的な観点の方が適していることもございますので、
ケースバイケースで使い分けることが最も重要かと思います。
クロスカット法
さて、前置きが非常に長くなりましたが、ここからが本編になります。
クロスカット法(碁盤目試験)は弊社でも毎日行っている試験になります。
詳細はこちらの碁盤目試験の項目をご覧ください。
端的にいえば、碁盤の目のように塗膜に傷をつけ(クロスにカットする)、そこにテープを貼って剥がすことで密着性を確かめるという試験です。
0~5まで6段階の評価基準があり、数字が小さいほど密着性が高いと言えます。
0~5という数字表記はあるものの、その基準は定められた見た目によるもの(厳密にいえば塗膜が剥がれた箇所/塗膜全体という割合の指標もあるのですが、そこまで厳密に測ることは難しいと言えます)ですので
JISの規格文にも「クロスカット法は定性的試験であるため、密着性の指標にはプルオフ法を勧める」旨の記載があります。
なぜプルオフ法が推奨されるのか。
それはプルオフ法が密着性を数値として測ることができる定量的試験だからです。
プルオフ法
上のコラムでも少し触れたプルオフ法ですが、クロスカット法と同じく名前通り、引っ張って剥がす(プルオフ)試験方法になります。
円筒状の試験治具を接着剤を用いて被塗装物にくっつけ、引っ張って剥がれた時の最小張力を測定し、数値化します。
張力を加え測定する機械が必要だったり試験円筒が必要だったり、クロスカット法と比較すると少々大がかりではありますが、
より正確な値を算出することが可能なので、お客様により安心してお使いいただくことができます。
弊社では元来クロスカット法を採用し、今までクロスカットの採用によって問題が起きたことはございませんが、
密着性の測定にプルオフ法をご所望の場合はご相談いただければご対応いたします。
なんなりとお申し付けくださいませ。
執筆者プロフィール
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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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