「わからない」を「わかった」にする
表面処理の疑問はメッキライブラリが解決します
ホーム / メッキライブラリ / カチオン電着塗装 / アルミ材に塗装やメッキは難しい?メッキ塗装難易度の違いと失敗を防ぐコツ

アルミ材に塗装やメッキは難しい?メッキ塗装難易度の違いと失敗を防ぐコツ

  • 公開日:

皆さま、こんにちは!
群馬県高崎市にて表面処理を手掛ける、株式会社三和鍍金と申します。

「アルミ製品への切り替えを検討しているが、メッキや塗装がきちんとできるのか不安」「アルミダイカスト品のメッキ不良に悩まされている」

というご相談を、設計・調達ご担当者様から数多くいただきます。

実は、アルミのメッキ・塗装難易度は「純アルミ材(展伸材)」か「アルミダイカスト材」かによって大きく異なるのです。その違いが生まれる理由を正しく理解したうえで適切な前処理を選べば、密着不良のリスクは大幅に減らせます。

この記事では、展伸材とダイカスト材の組織的な違い、メッキ・塗装が難しいとされる理由、そして密着性を高めるジンケート処理や無電解ニッケルメッキの役割について分かりやすくご紹介します。

素材選定や外注先への発注前に、ぜひ本コラムをお役立てください。

三和鍍金では電解研磨を含む50種類以上の表面処理を手掛けております。お見積もりのご相談など、お問い合わせはお気軽にどうぞ。

2種類のアルミ材の組織的な違いがメッキ難易度を左右する

純アルミ材とアルミダイカスト材は同じアルミニウムでありながら、製造方法の違いによって組織構造が大きく異なり、この差がメッキ・塗装の難易度を左右します。

展伸材(純アルミ材)とは — 均一な組織がもたらすメリット

展伸材とは、純アルミや展延性の高いアルミ合金を圧延・押出し加工して作られる素材です。(代表例:板材・棒材・押出し形材、よく使われる合金:A1000系・A5000系など)

この製法では金属が均一に引き延ばされるため、結晶組織が揃い、表面も比較的クリーンな状態に仕上がります。

前処理液が全体にムラなく作用しやすく、メッキ・塗装ともに密着性を確保しやすい素材といえます。

ダイカスト材とは — シリコン含有と鋳巣が生み出すリスク

アルミダイカストとは、溶融したアルミニウムを金型に高圧で注入して成形する鋳造材です。

自動車のエンジン部品や電子機器の筐体などに使われるADC12が代表的な合金で、強度を高めるためにシリコン(Si)を5〜12%程度含んでいます。

ただし高圧鋳造の過程で組織が不均一になりやすく、内部にガス巣や鋳巣、偏析が生じやすい点が特徴です。この素地の不均一さが、後述するメッキ・塗装の難しさに直結します。

アルミへのメッキ・塗装が難しい3つの理由

アルミへのメッキ・塗装が難しいと言われる背景には、素材特有の性質が前処理を妨げる3つの理由があります。ここでは、その原因を一つずつ整理します。

理由① アルミ共通 — 自然酸化皮膜が密着を阻む

アルミは空気に触れた瞬間から表面に酸化皮膜(不動態膜)を形成する性質を持ちます。

この皮膜は金属を保護する一方、メッキ液や塗料の密着を妨げる厄介な存在です。通常の酸洗いやアルカリ脱脂だけでは完全に除去しきれないことが多く、皮膜が残ったままメッキ・塗装を行うと、後から剥がれや膨れを招きます。

理由② ダイカスト特有 — スマット(黒い残渣)が表面に残る

ダイカスト材は表面にシリコンが露出しているため、酸洗いなどのエッチング処理を行うとシリコン分だけが溶け残り、黒い残渣「スマット」として表面に付着します。

スマットが残った状態でメッキを施すと、下地との間に異物を挟み込み、密着不良を引き起こします。展伸材にはほとんど見られない、ダイカスト特有のトラブルです。

理由③ ダイカスト特有 — 鋳巣・異物の残留が前処理を妨げる

鋳造時にできるピンホール状の鋳巣には、メッキ液や空気が入り込みやすく、後から膨れや剥がれを引き起こします。

加えて、成形時に使用する離型剤や切削油などの異物が素地に残っていると、通常の前処理だけでは十分に除去しきれません。

これらの要因が重なり、ダイカスト材の前処理は一段と手間がかかります。

密着性を確保する3ステップの前処理工程

ここまで見てきた、アルミ特有の酸化皮膜やダイカスト特有のスマット・鋳巣。これらに起因する課題を克服するには、以下の3つの前処理が欠かせません。

【前処理の基本フロー】
・①酸化皮膜の除去(脱脂・エッチング・ショットブラスト)
・②ジンケート処理(亜鉛置換/ダブルジンケート)
・③無電解ニッケルメッキによる下地形成

①酸化皮膜の除去:
脱脂やエッチングによりアルミ表面の酸化皮膜や汚れを取り除き、素地を露出させます。またはショットブラストにて物理的に酸化皮膜を除去することも可能です。

②ジンケート処理:
酸化皮膜を除去した直後に、アルミ表面を亜鉛の薄膜で覆うのがジンケート処理です。空気に触れて再び酸化皮膜ができる前に亜鉛でコーティングすることで、その後のメッキ層との密着性を確保します。密着性をさらに高めるため、この処理を2回繰り返す「ダブルジンケート」を採用するケースも多いです。

※ジンケート処理については、『ジンケート処理』の記事でもご覧いただけます。

③無電解ニッケルメッキ:
亜鉛層の上へニッケルを均一に析出させます。電気を使わない処理のため、複雑な形状でも膜厚のムラが出にくく、アルミ表面と後工程のメッキ・塗装をつなぐ役割を果たします。

※無電解ニッケルメッキについては、『【基礎中の基礎!+α】無電解ニッケルメッキについて』の記事でもご覧いただけます。

上記の3つの前処理を経ることで、本メッキや塗装を安定した密着性で仕上げることが可能です。

まとめ

今回は、純アルミ材とアルミダイカストの違いと、メッキ・塗装難易度について解説いたしました。最後に、記事の要点を振り返ります。

【本コラムのポイント】
・展伸材は組織が均一で前処理が効きやすい
・ダイカスト材はシリコン含有と鋳巣でリスクが高い
・酸化皮膜、スマット、鋳巣が密着不良の主な原因
・ジンケート処理でアルミ表面を保護し再酸化を防止
・無電解ニッケルメッキが密着性を高める橋渡し役

素材の特性を理解したうえで適切な前処理を選べば、アルミ製品・アルミダイカストともにメッキ・塗装の密着不良を防げます。

弊社、株式会社三和鍍金は、創業から70年以上表面処理に携わり、様々な製品の品質向上にお応えしてきました。メッキや表面処理をご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

※アルマイトについては、『【基礎中の基礎!+α】アルマイトについて』の記事でもご覧いただけます。

YouTube動画でも「アルマイトの基礎」を解説していますので、ぜひご覧ください。

関連リンク

執筆者プロフィール

column02
YouTube
SANWAMEKKI OFFICIAL YOUTUBE CHANNEL
このチャンネルでは、メッキ、塗装工程、仕組み、実験、解説動画等の
表面処理に関する知識を提供しております。是非一度ご覧になって下さい。
お見積り・お問合せ
スタッフ大募集!
お見積り・お問合せ