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【熱処理×電解研磨】ステンレスの鋭敏化

群馬県高崎市の表面処理業者、(株)三和鍍金と申します。

本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。

今回はステンレスの鋭敏化と呼ばれる現象についてお話しできたらと思います。

鋭敏化は熱処理を前工程に設けた製品の電解研磨時に起きる現象なのですが、弊社実績として「熱処理×電解研磨」はそこまで多くないため、

つい最近まで私には鋭敏化についての知識が全くありませんでした。

少し難解でしたが、できるだけわかりやすくまとめましたので最後までご覧いただければ幸いです。

また、ステンレスについての基礎的な部分はこちらのコラムに載っていますので、

こちらも是非ご覧ください。

鋭敏化とは

「鋭敏化」のことをGoogle先生に尋ねてみると、生物学や心理学の予測変換が出てきます。

「鋭敏」の類義語は「過敏」や「デリケート」なので、たしかにこれらの分野で用いられるのも納得がいきますね。

では、ステンレスは「何に対して」過敏になるのでしょうか。

また、「どういった条件で」過敏になるのでしょうか。

端的にいえば、鋭敏化とは不適切な熱処理によってステンレスが「腐食しやすくなる」現象を指します。

結論としてはそれで十分かもしれませんが、なぜ腐食しやすくなるのかを理解するためにまず用語の解説を行います。

用語と前提の解説

結晶~多結晶体と単結晶体~

金属は結晶の集まりです。水晶や鉱石など、結晶はほとんどの方が目にしたことがあるものかと思いますが、

その定義はあまり知られていないかもしれません。

結晶とは、「原子や分子、イオン等が規則正しく並び出来ているもの」になります。

金属を構成する結晶のことを結晶粒および単結晶体と呼びます。

単結晶の集まりを多結晶体と呼ぶので、金属は多結晶体であると言えます。

中学校の理科の授業で、火成岩の分野において「等粒状組織」やら「斑状組織」やら勉強した記憶はありませんか?

深成岩は等粒状組織から成っていて火山岩は斑状組織から成っている・・・

あれと似たようなものを思い浮かべてくだされば結構です。

結晶粒界(粒界)

「結晶粒界」という言葉において省略されている文字は何でしょうか。

正解は「と結晶粒の境」です。

「結晶粒と結晶粒の境界」のことを「粒界」と略しているのです。

※余談:「若者は何でもすぐ略す」と揶揄されますが、学術用語や専門用語などもこのように略されがちですよね。たしかに略すことで単語が多義化しパッと見で意味がわかりづらくなる場合も多々あります。しかし若者に限定する必要はありませんよね、と若者が申しております。

粒界腐食

粒界に腐食が起こることを指します。

粒界に沿う形で起き、腐食が激しい場合は結晶粒が剥がれてしまうことも。

また、補足として以下のことを記しておきます。

熱処理

熱を加えて製品や素材に様々な効果をもたらすものです。

詳細はこちらの記事をご覧ください。

焼き入れの他、広義的には溶接なども熱処理にあたります。

粒界と不純物

粒界には不純物がたまりやすいと言われています。

換言すれば粒界は「溝」なので、排水溝に水やごみがたまっていくのと同じ原理です。

「溝」にたまった炭素と付近のクロムが結合することで、鋭敏化は引き起こされます。

炭素化合物

炭素と何かしら別のものがくっついたものと考えていただいて差しつかえないかと思います。

具体的にはたとえば、木材なんかも炭素化合物です。

クロムの化学的安定性

ニッケルやクロム、モリブデンなどは化学的安定性の高い金属として知られています。

「化学的安定性の高い」とは「耐食性が高い」と同義です。

錆びにくいということですね。

ステンレスなどの合金鋼は、鉄にニッケルやクロムなど耐食性の高い金属を混ぜることで高い耐食性を誇っているのです。

しかしこれは裏を返せば、クロムやニッケルの含有率が減るほど、耐食性は劣るということ。

「クロムが減った分、耐食性が落ちる」というのはこういった前提からきているのです。

鋭敏化の原理

上記の単語や前提を理解した上で、下の文を読んでみましょう。

鋭敏化は粒界に存在する不純物(炭素)と不適切な熱処理の掛け合わせによって起こる。熱処理によって粒界中の炭素がクロムと結合し、炭素化合物が生成され、それによって粒界付近のクロムが減り(炭化物と結合する分減少する)、周りのクロムが減った分耐食性が落ちる。その結果、粒界腐食が起きやすくなる。

これが鋭敏化の原理になります。

単語を理解すれば、特に難しい点はないかもしれませんね。

「何に対して鋭敏化する(過敏になる)のか」

その答えは「粒界腐食に対して」となり

「どのような条件で鋭敏化するのか」

その答えは「不純物のある条件で不適切な熱処理を行った場合」となります。

ちなみに不適切な熱処理とは、温度と時間に関係した一概には言えない特定の条件を指します。

X軸Y軸をそれぞれ時間と温度に設定したグラフにした場合も、比例とか反比例とかそういった決まった形にはなりません。

鋭敏化の対策

腐食が起きてしまうことは金属製品においてよろしくないですよね。

そんな鋭敏化を防ぐ方法として以下のようなものが挙げられます。

・低炭素材(L材)もしくは安定化ステンレス鋼(SUS321 or SUS347)を採用する

・入熱及び熱履歴をきちんと管理する

※入熱・・・熱処理のこと。

※熱履歴・・・熱処理等、熱が加わった過程の履歴のこと。

低炭素材or安定化ステンレス鋼の採用

不純物である炭素が少なければ少ないほど、単純に鋭敏化は起こりにくいと言えます。

したがって、SUS316Lなど「L」がついたものを素材として採用することで鋭敏化を防ぐことが可能です。

※このLは「炭素が少ない(Low)」の略かもしれませんね。

またSUS310、SUS321、SUS347など、より安定性の高いステンレス鋼を採用することも有効です。

ただし、これらは最も一般的なステンレスであるSUS304に比べると高価です。

入熱・熱履歴の管理徹底

熱処理がない、またはある場合も適切な熱処理であれば問題なく使用可能なので

行われた熱処理の温度と時間がどのくらいなのかを管理・把握する必要があります。

既に鋭敏化してしまった製品は?

改めて「溶体化処理」と呼ばれる熱処理を施すことで改善される場合があります。

SUS304であれば1000℃ほどの高温で入熱後、水冷します。

しかし、製品が変形して使用不可になる可能性もございますので注意が必要です。

いかがだったでしょうか。

腐食しやすくなる現象とは、非常に厄介ですね。

適切な素材選びと適切な熱処理工程をもって、鋭敏化を防ぎたいところです。

他のコラムやYouTubeなども是非ご覧いただければと思います。

ありがとうございました。

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