ケミカルリサイクル完全ガイド|廃プラスチック問題の解決策としての可能性
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皆様、こんにちは。
群馬県高崎市で表面処理を行っております。株式会社三和鍍金です。
今回は「ケミカルリサイクル」について詳しく紹介していきます。
毎日私たちが使うプラスチック製品は、使い終わるとどこへ行くのでしょうか?
実は、廃棄されるプラスチックの多くは、まだまだ有用な資源として再利用される潜在力を秘めています。
ケミカルリサイクルでは、使用済みのプラスチック製品を科学的手法で分解し、新たなプラスチック製品の原料に変換します。
これはまさに、使い古されたプラスチックに新たな生命を吹き込む、現代の錬金術とも言えるでしょう。
この記事では、ケミカルリサイクルの具体的な方法や、そのメリット、さらには直面する課題や現状について、詳細にわたって解説していきます。
私たちの生活を豊かにし、地球環境を保護するために、ケミカルリサイクルがどのような役割を果たしているのか、一緒に見ていきましょう。
三和鍍金では金属の表面処理だけでなく環境保護に繋がる剥離事業も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
目次
ケミカルリサイクルとは
あなたが普段使っているプラスチック製品、それが使い終わった後、どうなるか知っていますか?
多くは捨てられてしまいますが、そのプラスチックが再び役立つ方法があります。
それが「ケミカルリサイクル」です。
ケミカルリサイクルとは、使い終わったプラスチック製品を科学的な方法で分解し、また新しいプラスチック製品の原料として生まれ変わらせるリサイクル方法です。
言い換えれば、ケミカルリサイクルは、使い古されたプラスチックに新しい命を吹き込む魔法のような技術です。
この技術には、色々な方法があります。
例えば、プラスチックを原料やモノマーと呼ばれる小さな分子に戻す「原料・モノマー化」、プラスチックをガスに変えて再利用する「ガス化」、さらに、プラスチックを油に戻して再利用する「油化」など、多種多様な方法があります。
ケミカルリサイクルの具体例
ケミカルリサイクルは、使われなくなったプラスチックや他の素材を新しい資源に変える、素晴らしい技術です。
さまざまな方法があり、そのいくつかを紹介しましょう。
原料・モノマー化
この方法では、使い終わったペットボトルなどのプラスチックを、化学的に分解し、原料やモノマー(プラスチックの基本単位)に戻します。
そして、これを使ってまた新しいプラスチック製品を作ります。
この技術により、プラスチック製品が完全なサイクルを形成し「ボトルtoボトル」が可能です。
ガス化
ガス化は、プラスチックを酸素の少ない環境で加熱し、ガスに変える技術です。
このガスは、炭酸飲料の炭酸ガスや、化学工業の原料として使われます。
ガス化によって、廃棄されるプラスチックも価値ある資源に生まれ変わります。
飼料化
飼料化は、廃棄された食品などを特殊な処理で飼料に変える技術です。
例えば、売れ残ったドーナツを処理し、乾燥飼料に加工して動物のエサに再利用します。
このプロセスで、食品廃棄物も再び有用な資源に変わります。
油化
油化は、プラスチックを熱分解して、炭化水素油に変える方法です。
この油は、ボイラーの燃料などに使われます。
驚くべきことに、1kgのプラスチックから1リットルの軽油を作ることができます。
バイオガス化
バイオガス化は、家畜の糞尿や食品廃棄物を微生物で発酵させ、ガスを作る技術です。
このガスに含まれるメタンは、発電などに使われます。
この方法では、生活廃棄物をクリーンエネルギーに変化させることが可能です。
ケミカルリサイクルはなぜ注目されているのか?
ケミカルリサイクルが注目される理由には、環境への配慮、資源の効率的利用、そしてリサイクル技術の進化があります。
マテリアルリサイクルの限界
従来のリサイクル方法、特にマテリアルリサイクルは、資源を再利用する方法としては有効ですが、すべてのプラスチック製品を再生できるわけではありません。
異物が混入していたり、品質が低下していたりすると、再利用が難しくなる可能性が高いです。 しかし、ケミカルリサイクルならば、これらの問題をクリアし、より多くの廃プラスチックを高品質な資源に変えることができます。
廃プラスチック問題
世界中で増え続けるプラスチックごみ。これをただ埋め立てたり焼却したりするだけでは、環境汚染が進んでしまいます。
プラスチックは自然分解されにくいため、地球上に長期間残り、生態系に悪影響を与えることが問題です。
ケミカルリサイクルによって、これらのプラスチックを有用な資源に変えることができれば、廃棄物の減少につながります。
資源の枯渇
地球上の資源は有限です。特に石油などの化石資源は、使えば使うほど減っていきます。
しかし、ケミカルリサイクルを活用すれば、廃プラスチックから新たなプラスチックを作り出すことができ、これらの限られた資源を有効に利用することが可能です。
ケミカルリサイクルのメリット
ケミカルリサイクルは、廃プラスチック問題に対する効果的な解決策であり、地球環境を守るための重要な手段です。
そのメリットは多岐にわたります。
CO2排出量の削減
ケミカルリサイクルは、二酸化炭素(CO2)の削減にも貢献します。
特に、焼却処理やマテリアルリサイクルと比較して、ケミカルリサイクルはCO2排出量を減らすことが可能です。
これにより、地球温暖化や大気汚染といった環境問題への対策にも効果的です。
限りのある天然資源を有効に使える
ケミカルリサイクルでは、廃プラスチックを化学工業の原料に変えることができます。
これにより、石油などの天然資源を節約し、資源の枯渇問題にも対応可能です。
例えば、廃プラスチックから水素やメタノール、アンモニア、酢酸などを生み出すことができ、これらは化学工業で広く利用されています。
異物が含まれていてもリサイクルできる
ケミカルリサイクルでは、高熱での熱分解や化学的な分解を行うため、異なる種類のプラスチックが混在している廃プラスチックでもリサイクルが可能です。
これは、従来のリサイクル方法では難しかった、異物の混入がある場合にも対応できるという大きなメリットを持っています。
ボトルtoボトルが可能になる
使用済みのペットボトルを原料に戻し、新しいペットボトルに再生することが可能です。
これは「ボトルtoボトル」と呼ばれ、衛生面の問題から一度使われた製品が飲料ボトルの原料に適さなかった従来の問題を解決しました。
異物を完全に除去し、品質の高い製品を生み出すことができるため、資源の有効活用が図れます。
ケミカルリサイクルの課題
ケミカルリサイクルは地球環境を守るための有効な手段ですが、いくつかの課題も存在します。
コストの問題
ケミカルリサイクルは大規模な設備投資を必要とし、また処理過程が複雑であるため、高コストになりがちです。
廃プラスチックをリサイクル設備まで運ぶ輸送コストも含め、コストが高くなることは、リサイクルを継続的に行う上での大きなハードルなので無視できません。
これらのコスト問題を解決するためには、技術の進歩や効率的なシステムの構築が必要です。
廃プラスチックを安定的に確保すること
ケミカルリサイクルを成功させるためには、大量の廃プラスチックを安定的に確保する必要があります。
しかし、実際にはどの地域でどんな種類の廃プラスチックが存在するのかを把握し、それを効率良く回収するシステムを構築することは容易ではありません。
企業や自治体との連携を強化し、廃プラスチックの回収とリサイクルに向けた体制を整えることが求められます。
プラスチック添加物の処理技術の課題
プラスチックには耐久性や特定の性質を付与するために様々な添加物が使用されています。
これらの添加物を適切に処理する技術は、環境への影響を考慮すると非常に重要です。
しかし、現状ではこれらの添加物を効率良く処理する技術はまだ十分には確立されておらず、この点がケミカルリサイクルの大きな課題です。
ケミカルリサイクルの現状
ケミカルリサイクルは環境問題への有効な対策として世界各地で注目されていますが、地域によってその進捗状況は異なります。
欧州
欧州では環境保護を先導しており、2018年にEUがプラスチック戦略を採択しました。
2030年までにEU域内で使用される全てのプラスチック包装材をリユースまたはリサイクル可能にする目標が設定されています。
また、再生プラスチックの供給量の増加や先進技術への投資が進んでいます。
例えば、ドイツのBASFは混合プラスチック廃棄物の熱分解や熱分解油の精製を専門とするプラントを開発中です。
アメリカ
アメリカでは、リサイクル率が12%とまだ低いですが、ケミカルリサイクルへの注目度は高まっています。
石油大手のエクソンモービルは、ケミカルリサイクルの商業化に取り組んでおり、年間3万トンの廃プラスチックをリサイクルできる規模のプラント建設を発表しています。
日本
日本では、廃プラスチックのリサイクル率が86%と高い一方で、その大部分がサーマルリカバリー(熱回収)であり、ケミカルリサイクルの割合は約3%に留まっているのが現状です。
大規模な設備投資が必要であること、国内にはケミカルリサイクル施設が少ないこと、都市部から施設までの輸送コストの問題などが課題とされています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「ケミカルリサイクル」について解説してきました。
ケミカルリサイクルは、環境汚染の軽減、資源の効率的利用、そして廃プラスチック問題の解決策として、非常に大きな潜在力を持っています。
多様な方法を駆使し、CO2排出の削減から天然資源の有効活用まで、地球環境に配慮したサイクルを実現するための重要な要素です。
しかし、コストや技術、廃プラスチックの確保といった点でのハードルを乗り越え、さらなる進展を遂げる課題も残されています。
世界各国での取り組みや進行中のプロジェクトを考慮すると、ケミカルリサイクルの未来は明るいものと期待されますが、その進化と普及には私たち一人ひとりの理解と支援が不可欠です。
弊社、株式会社三和鍍金では50種類を超える表面処理の取り扱いだけでなく、環境保護に繋がる剥離事業にも事業内容を拡大しております。
「表面処理」「剥離」「リサイクル」に関することでしたら是非一度お気軽にご連絡ください。
執筆者プロフィール
- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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