【必見】低温黒クロムメッキと黒クロムメッキについて
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※2023年9月22日に加筆修正致しました。
こんにちは。
群馬県高崎市にてめっき・塗装・研磨等をおこなっております、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
今回は黒クロムメッキにフォーカスしたコラムです。
弊社では黒クロムメッキも承っておりますのでお気軽にお問合せ下さい
皆さん、黒クロムメッキって聞いたことがありますでしょうか?
似たようなものにはたとえば、
低温黒クロムメッキ、装飾クロムメッキ、硬質クロムメッキ、三価クロムメッキ
などなど、非常に紛らわしいものもありますね。
この中から今回は特に低温黒クロムメッキと黒クロムメッキに注目して解説していきます。
その他の処理にも簡単に触れていきますね。
あなたもこのコラムを読めばクロムメッキマスターです!
それではいきましょう。
弊社ではクロムメッキをはじめとして各種表面処理の情報をYouTubeにて発信しております。
図解等でできるだけわかりやすくまとめていますので、よろしければ見てみてください。
めっきとは?クロムとは?クロムメッキとは?
まず、簡単にめっきについて解説します。
めっきとは電気的または化学的に製品表面に金属の皮膜を析出させる表面処理技術です。
簡単に言えば電気を使うタイプのめっき(電気めっき)と使わないタイプのめっき(無電解めっき)があるということです。
素材に対して様々な機能を付与させることができるため、食品から航空・宇宙まで幅広い分野で用いられています。
さて、クロムとは何でしょう。
クロムという単語自体はものづくりに関わりのない方でも聞いたことがあるくらいですね。
錆びにくく化学的に安定した金属として知られ、消費量のほとんど(95%以上)はステンレスの混ぜ物として用いられています。
そうです、ステンレスの錆びにくさの要因となっているのがまさにこのクロムという金属なんですね。
この「クロム」という金属を先に説明した「めっき」という技術で製品の表面につくりだす…
これこそが「クロムメッキ」の正体です。
では、本題である黒クロムメッキの話の前に、
装飾クロムメッキ・硬質クロムメッキ(ハードクロムメッキ)・三価クロムメッキ
について触れていきましょう。
装飾クロムメッキは「装飾」と仰々しいネーミングになっていますが、これは皆さんが最も多く見かけたことのあるいわゆる普通のクロムメッキを指します。
美観を目的として自動車の外装パーツ・エンブレムや洗面台周りなどに用いられていますね。
対して硬質クロムメッキというのは耐摩耗性や摺動性など、より機能的な面を目的として採用されることが多く、
機械設備関係や装置関係など幅広く用いられます。
装飾クロムメッキに比べて膜厚が厚く(およそ10~100倍)、さらに高価な処理として知られています。
また、クロム関連でよく話題になるのが「三価クロム」と「六価クロム」の問題で、
欧米の法律「RoHS」や「REACH」などの影響を受けて特に自動車業界では注目されてきました。
弊社の装飾クロムは六価クロムを用いていますが、協力工場様においては三価クロムを使用した装飾クロムメッキも可能です。
環境面:六価クロム<三価クロム
耐食性:六価クロム>三価クロム
という関係性があります。
ちなみに、この二つの違いはめっき液にどちらを使用しているかで決まります。
下で紹介する「黒クロムメッキ」及び「低温黒クロムメッキ」はどちらもめっき液には六価クロムを使用していますので、
あえて分類するのであれば六価クロム使用の処理と言えます。
ただし、下層にて説明しているように皮膜自体には六価は含まれていません(0価の金属クロム及び三価クロムの化合物)。
時たま「三価の黒クロムメッキはありますか?」とお問い合わせいただくこともあるのですが、
私が調べ直した感じですと、現時点では恐らくないと思われます。
これはめっき液に三価クロムを使用していないという意味です。
RoHS対応しているか、という観点であれば処理していただく協力工場様によって異なってきますので、ご相談ください。
黒クロムメッキってなに?
さて、本題に入っていきましょう。
黒クロムメッキとは何なのか、ここまで読んできた方は何となくイメージがつくはずです。
クロムから成る黒色のめっき皮膜を生成する電気めっき技術のことを「黒クロムメッキ」といいます。
この「黒色」はどのようなメカニズムなのか、気になりますよね。
黒クロムメッキの皮膜は実は金属のクロムだけではなく、三価クロムの化合物と併せて形成されます。
ではなぜ黒く見えるのかというと、三価クロムの化合物が微粒子上に積み重なることでミクロな隙間が非常にたくさんでき、
その凹凸・陰・隙間によって黒く見えているのです。
この黒クロムメッキは低反射性・熱吸収性・導電性・耐食性などを目的としてカメラの部品や車の部品、機械装置の部品などに用いられています。
膜厚についても1~3μ程度とかなり薄いため、寸法精度の厳しい製品に対しても問題なく使用できます。
クロムメッキほどありふれた処理ではありませんが、一部用途においては黒クロムメッキも多く採用されている処理のひとつです。
また、黒クロムメッキは基本的にRoHS対応は不可となります。
理由は単純で、形成される皮膜自体は金属クロム(0価)あるいは三価クロム化合物なのですが、
無数に空いたその隙間に処理液(六価クロム含有)が入り込み、完全な洗浄が難しいためです。
したがって、仮に完全に隙間の中まで洗浄できるとすればRoHSにも適合できると言えるでしょう。
低温黒クロムメッキってなに?
さらに低温黒クロムメッキについてみていきましょう。
こちらはセラミックやテフロンなどの樹脂及び金属クロム・三価クロム化合物から成る皮膜を形成する電気めっき処理になります。
黒クロムメッキの一般的なメッキ液の温度が50℃付近であることに対し、-10℃~25℃ほどの低温にて処理をおこなうことから
低温黒クロムメッキと呼ばれています。
※0℃を下回る低温黒クロムメッキを極低温黒クロムメッキと呼称する場合もあります。
膜厚については黒クロムメッキと同様に1~3μ程度ですので、こちらも公差の厳しい製品などに用いることができます。
黒クロムメッキと異なる点についてですが、低温黒クロムにおいては三価クロムの化合物でできたクラックやピンホールに対して、上に挙げた樹脂を染み込ませます。
そうすることによってクラックやピンホールをできるだけなくし、耐食性や樹脂による別の機能が補われる仕組みとなっています。
配合する樹脂によって付与できる機能が変わること、耐食性や低反射率に優れていることが特徴です。
また、RoHS対応について、めっき液は六価クロムを含有しており、かつ黒クロムメッキの内容と同じく
凹凸に入り込んだめっき液の完全な除去ができなければ不可となります。
が、処理業者によっては独自技術でめっき液の完全除去をおこないRoHS対応可としているところもあるようです。
まとめ
いかがだったでしょうか。
各種黒クロムメッキにつき、その仕様や対応可能サイズについてお気軽にお問い合わせください。
※社内処理ではなく協力工場様にて処理をおこないます。
執筆者プロフィール
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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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