剥離して再利用できる金属資源「タングステン」とは?
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皆様、こんにちは。
群馬県高崎市で表面処理を行っております。株式会社三和鍍金です。
今回は、皆様が少しは耳にしたことがあるであろう「タングステン」について詳しく紹介していきます。
現代の社会で使われる多くの先進的な技術や製品には、希少な金属資源であるレアメタルが欠かせません。
皆様も手にしているスマホ、照明や医療機器にもレアメタルが使用されています。
しかし、これらの貴重な金属資源は限られており、そのリサイクルが現代社会における直近の課題です。
「タングステンはどのような金属なのか?」
「どのような工程をたどって再利用されていくのか?」
このような疑問にお答えするため、タングステンの基本から再利用のプロセスまで深掘りしていきます。
製造業の観点から、タングステンの重要性と未来の展望について見ていきましょう。
三和鍍金では金属の表面処理だけでなく剥離事業も行っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
目次
タングステンとは?
タングステンは、多くの人が普段耳にすることのない金属ですが、
その特性は工業界で高く評価されています。
スウェーデン語で「重い石」を意味するこの金属は、
元素記号W(ドイツ語名のWolframから)で表され、独特の物理的特性を持っています。
タングステンの特性
タングステンは、独特の物理的特性により、産業界で広く利用されている金属です。
この素材の最も顕著な特徴は、金属として最も高い融点を持つことです。
その融点は3653K(約3380℃)にも達し、これによりタングステンは高温環境下での用途に特に適しています。
高温での形状安定性に優れていることは、低い熱膨張率にも起因しています。
電気抵抗率が高いというのもタングステンの重要な特性の1つです。
他の金属に比べて大きな電気抵抗を持つため、電球のフィラメントなどに使用されることが一般的です。
また、この高い耐熱性と電気抵抗の組み合わせは、電子機器の重要な部品にも応用されています。
密度面で見ると、タングステンは非常に重い金属です。
比重は19.3で、金とほぼ同じ重さを持ち、鉄の約2.5倍、鉛の1.7倍の重量があります。
この高密度のため、タングステンは放射線遮蔽材料としても優れた性能を発揮します。
特に医療分野でのX線CTなどにおいて、環境負荷が低く放射線遮蔽能力が高いので重宝されている素材です。
硬度の面でも、タングステンは顕著な特性を持ちます。
炭素と結合することでさらに硬くなり、モース硬度でダイヤモンドに次ぐ「9」に位置づけされる程の硬さです。
タングステンカーバイド(WC)など、タングステンを含む合金は、その高い硬度から切削工具などに広く使用されています。
しかし、その硬さが加工の難しさをもたらすという側面もあります。
これらの特性から、タングステンは工業用途において非常に価値があり、様々な分野で利用が拡大しているのが現状です。
高い融点、優れた耐熱性、大きな電気抵抗、高密度、そして高い硬度という特性は、タングステンを他の金属と一線を画すものとしています。
タングステンの用途
タングステンは、独特な物理的特性により、多岐にわたる分野で活用されています。
この金属の最大の特徴である高い融点と電気抵抗を活かして、自動車や医療、半導体、工具、家電、照明などの産業で重要な役割を果たしてきました。
一般的な用途としては、タングステン線や棒が電球のフィラメント、放電線、放電ランプの電極などに使われています。
高温環境でも硬度を保持できるため、切削工具や研磨工具にも広く利用されています。
これはタングステンカーバイド、つまりタングステンと炭素の化合物が超硬合金の主成分として活用されているからです。
タングステンの高い耐熱性は、白熱電球のフィラメントや、電子レンジのマグネトロンなどにも利用されています。
しかし、LED照明の普及により、この用途での需要は減少傾向です。
また、その高密度を活用した用途もあります。
釣りの重り、腕時計の重りなど、限られたスペースで重量が必要な場所にタングステンが使われています。
工業分野では、抵抗溶接電極、TIG電極棒、高温炉用耐熱構造部品としての役割も果たしてきました。
さらに、軍事分野では徹甲弾や砲弾の弾芯、放射線遮蔽材、医療分野ではカテーテル治療器具にも使用されていて非常に優秀です。
高速度工具鋼としての用途もあり、タングステンは高温下でも強度と硬さを保つため、ドリルや旋盤などの金属加工工具に不可欠です。
これらの用途は、タングステンの硬さと耐摩耗性に依存しています。
総じて、タングステンはその独特な物理的特性により、工業用途を中心に様々な分野で幅広く使用されており、現代社会の様々なニーズに応える重要な素材です。
タングステンの剥離技術
タングステンの剥離技術は、使用済みのタングステン製品から純粋なタングステンを取り出し、再利用する方法が一般的です。
この技術は、資源の持続可能性を高めるために非常に重要であり、廃棄物を減らし、新たな鉱石の採掘を抑制することにも大きく貢献します。
タングステンの剥離と再利用の流れは、まず使用済み製品からタングステンを分離し、それを精製して再び純粋な形で取り出すことから始まります。
この剥離工程は、溶媒抽出法や晶析剥離法を用いて行われることが多いです。
これにより、タングステンは新たな製品として再び市場に供給されます。
この再利用は、資源の持続可能性を高める上で非常に有効な手段です。
近年、この剥離技術は大きく進歩しており、より効率的で環境に優しい方法が開発されています。
タングステンの再利用と未来
タングステンの再利用は、持続可能な資源管理のモデルとして注目されています。
この方法に含まれている工程は、収集から分類、精製、そして再製造です。
収集された使用済みタングステン製品はまず分類され、適切な精製方法が適用されるのが一般的です。
その後、適切な方法で精製されたタングステンは、様々な新製品の製造に再利用されます。
この循環的な方法により、タングステンの供給はより持続可能なものとなるでしょう。
再利用による経済や環境に与える影響
タングステンの再利用は、経済面でも大きなメリットをもたらします。
新たな鉱石の採掘コストは高く、また採掘に伴う環境への影響も深刻です。
再利用により、これらのコストと影響を削減できるだけでなく、新しいビジネス機会の創出にも繋がります。
資源の効率的な使用は、長期的な経済的持続可能性をもたらし、企業にとっても魅力的な選択肢となるでしょう。
タングステンの持続可能な管理は、地球環境の保護と資源の効率的な使用という両方の側面で重要です。
再利用技術の進展により、タングステンは環境に優しい資源としての地位を強化してきました。
さらに、技術の革新によって、今後もタングステンの再利用はさらに効率的で環境に優しいものに進化していくことが期待されています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。今回は「タングステン」について解説してきました。
タングステンをはじめとするレアメタルのリサイクルは、現代社会の大きな課題の1つです。
世界情勢などの影響で採掘できる量が減少し、需要が増え続けるという一方通行の流れの中で、リサイクルは今後の社会を支える基盤として期待されています。
今回紹介したタングステンは希少性の高い資源ですが、金や銀、銅までもがリサイクルを求められているのが現代社会です。
日常生活の中で私たちが小さなことから意識的に行動することが求められます。
弊社、株式会社三和鍍金では50種類を超える表面処理の取り扱いだけでなく、
環境保護に繋がる剥離事業にも事業内容を拡大しております。
「表面処理」「剥離」「リサイクル」に関することでしたら是非一度お気軽にご連絡ください。
執筆者プロフィール
- 金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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