あなたのスマホにも!IoT機器の性能を支えるメッキ技術の基本
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最先端のIoT機器やスマートフォンが、実は「メッキ」技術により支えられていることをご存知でしょうか。
私たちの生活に欠かせないこれらのデバイスは、内部にある無数の電子部品が正しく機能することで成り立ちます。
この記事では、普段あまり意識することのない「メッキ」が、身近な製品の中でどのような重要な役割を果たしているのか、その基本を分かりやすくご紹介します。
三和鍍金ではIoT機器向けメッキを含む50種類以上の表面処理を手掛けております。お見積もりのご相談など、お問い合わせはお気軽にどうぞ!
YouTube動画では「錫メッキ」について解説していますので、ぜひご覧ください。
目次
スマホやIoT機器の性能を決める3つのメッキの役割

メッキと聞くと、装飾やサビ止めをイメージする方が多いかもしれません。
しかし、IoT機器においては、製品の性能や信頼性を直接左右する、さらに重要な役割を担っています。
【スマートフォンやIoT機器におけるメッキの主な役割】
・情報を正確に伝える「電気的接続」の確保
・繊細な部品をサビや摩耗から守る「保護」
・熱やノイズを抑制する「機能の付与」
具体的には以下の通りです。
電気的接続の確保:メッキが部品同士の接続部分(コネクタなど)で電気の流れを安定させます。これにより、通信の安定性や機器の確実な動作が保たれます。
保護機能:湿気によるサビや摩耗といった外部ダメージから繊細な電子部品を守り、製品自体の寿命を延ばします。
機能の付与:電磁波の遮断(シールド特性)や接触熱抵抗の低減などの機能を付与し、IoT機器の小型化・高性能化に貢献します。
このように、メッキはIoT機器の基本性能から先進機能まで幅広く支える、不可欠な技術といえます。
IoT機器を支える代表的な4つのメッキ技術

それでは、実際にどのようなメッキが使われているのでしょうか。
ここでは、現在のIoT機器を支える代表的な4種類のメッキについて、それぞれの特徴と主な用途をご紹介します。
【金メッキ】最高の信頼性を誇るがコストが課題
金メッキは、メッキの中でも最も高い信頼性を持ちます。金は化学的に非常に安定しており、酸化や腐食に対する抵抗力が極めて高く、導電性にも優れています。
この特性により、スマートフォンのコネクタ端子、高精度センサーの接点部分など、高い信頼性が求められる重要な部分で活用されています。長期間にわたって安定した電気的接続を維持する用途では、金めっき以外の選択肢が限られる場合もあります。
ただし、他のメッキと比較してコストが非常に高いという課題があります。そのため、必要最小限の接点部分のみに適用する工夫が重要です。
※金めっきに関する詳しい解説は、『硬質金メッキとは?』の記事でもご覧いただけます。
【すずメッキ】はんだ付け性と経済性のバランス
すずメッキの最大の特徴は、電子部品を基板に固定する「はんだ付け」との相性が非常に良いことです。
この特性により、電子基板上の部品接続端子(リードフレーム)や集積回路のパッケージなど、はんだ付けが必要な箇所で幅広く利用されています。また、すずは比較的安価な材料であるため、大量生産される電子製品において経済性の面でも大きなメリットがあります。
ただし、「ウィスカ」と呼ばれる微細なヒゲ状の結晶が表面から成長し、回路の故障を引き起こすリスクがあるため、対策が重要です。※解説記事『【簡単解説】ウィスカって何?』
※すずめっきに関する詳しい解説は、『【基礎中の基礎!+α】錫メッキについて』の記事でもご覧いただけます。
【ニッケルメッキ】耐久性と下地処理の要
ニッケルメッキは、優れた耐久性と多用途性があります。ニッケルは硬度が高く耐食性に優れているため、部品を摩耗や腐食から長期間保護する特性があります。
この特性により、コネクタ部品、電磁波を遮断するシールドケース、摩耗が発生しやすい接点部分などで活用されています。また、他のメッキ(金メッキなど)をしっかりと密着させるための下地処理としても重要な役割を担っており、複数の層を重ねる多層メッキの基盤として欠かせません。
ニッケルは金属アレルギーの原因になりうるため、人体に直接触れる用途では使用が制限される場合がありますが、IoT機器の内部用途では一般的には問題となりません。
※ニッケルめっきに関する詳しい解説は、『【基礎中の基礎!】ニッケルメッキについて』の記事でもご覧いただけます。
【銀メッキ】高周波特性に優れる5G時代のキーパーツ
銀メッキは、最も優れた導電性を持つメッキです。銀の最大の特徴は、特に高い周波数の電気信号(高周波)を効率的に伝送できることです。
この特性により、5G通信機器のアンテナ部品、高周波フィルター、マイクロ波回路など、高速・大容量通信を支える重要な部品で採用されています。IoT機器の通信性能向上において、銀メッキの役割はますます重要になっています。
ただし、銀は空気中の硫黄成分と反応しやすく、時間の経過とともに表面が硫化して変色する特性があるため、対策や取り扱いに注意が必要です。
※銀めっきについては、【電気的特性に優れたメッキの種類 】の記事でもご覧いただけます。
まとめ
今回は、IoT機器やスマートフォンを支えるメッキ技術の基本的な役割と種類についてご紹介しました。
記事の要点を以下にまとめます。
・電気的接続、保護、機能付与の3つがIoT機器におけるメッキの主要な役割
・金メッキは最高の信頼性を持つが、コストが高いため部分的な使用が重要
・すずメッキははんだ付け性と経済性に優れるが、ウィスカ対策が必要
・ニッケルメッキは耐久性と下地処理の両面で重要だが、アレルギーリスクへの配慮がが必要
・銀メッキは5G時代の高周波特性に優れるが、硫化対策が求められる
一つの製品が正しく機能するために、目的に応じて様々なメッキが使い分けられているため、適切なメッキ選定により、IoT機器の性能向上と信頼性確保が可能になります。もし、それぞれのメッキについて、より詳しい特性や処理方法に興味が湧きましたら、ぜひ各リンク先の詳細記事もご覧ください。
弊社、株式会社三和鍍金は、創業から70年以上表面処理に携わり、製品や部品の品質向上に貢献してまいりました。IoT機器向けメッキをはじめとする表面処理のご相談に加え、分析・試験にも対応しております。ご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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