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2025/09/24

人に優しい金属⁉医療器具の生体適合性に適した電解研磨の特徴とは

  • 公開日:

群馬県高崎市にて表面処理を手掛ける、株式会社三和鍍金と申します。

だんだんと涼しくなり、秋の風を感じるようになってきましたね。

季節の変わり目は体調を崩しやすく、病院に行かなくてはいけない機会も増えますよね。

実は病院の中にも、表面処理の技術が生かされているのです。

今回は医療器具の生体適合性に適した電解研磨の特徴ついての詳しく解説いたします。

手術用メスやインプラント、カテーテルといった医療器具は、患者の体内で安全に機能することが絶対条件です。しかし、その「安全性」は、単に「丈夫な金属を使えばいい」という単純な話ではありません。

本コラムでは、医療器具に求められる「生体適合性」とは何かを掘り下げ、その安全性を支える電解研磨の技術や特徴について解説します。

三和鍍金では電解研磨を含む50種類以上の表面処理を手掛けております。

お見積もりのご相談など、お問い合わせはお気軽にどうぞ!

YouTube動画でも「電解研磨の基礎」を解説していますので、ぜひご覧ください。

医療器具に求められる【生体適合性】とは

「生体適合性(バイオコンパチビリティ)」という言葉をご存知でしょうか。普段の生活の中では中々耳にすることはないですが、医療器具を扱う業界では頻繁に耳にする専門用語で、「人間の生体組織や機能に悪影響を及ぼさない材料の性質」を指します。

手術器具や体内に留まるインプラントのように、患者様の体に直接触れたり、長期間留置されたりする医療器具は、この「生体適合性」が特に厳しく求められます。これは単なる安全性だけでなく、医療器具本来の機能を発揮させるためにも不可欠な要素です

なぜ「電解研磨」が生体適合性に必要なのか

医療器具に使われるステンレスやチタンなどの金属は、それ自体が比較的高い生体適合性を持っています。しかし、素材のままでは、生体への安全性を完璧に保証することはできません。その理由は、金属の表面に潜む様々な「見えないリスク」にあります。

実は、金属の表面には、製造や加工の過程で生じた微細なバリ(突起)や、肉眼では見えないほどの凹凸、そして様々な不純物が付着しています。これらは、アレルギー反応や感染といった生体適合性を損なう直接的な原因となるのです。電解研磨は、これらの課題を解決し、医療器具の安全性を最大限に引き出すために必要不可欠なプロセスです。

※電解研磨に関する詳しい解説は、『電解研磨とは?原理と方法からメリットデメリット・専門業者に依頼するメリットまで徹底解説!』をご覧ください。

生体適合性に適した電解研磨の特徴

3-1不純物の徹底的な除去

金属の製造や加工の過程で、微細な金属粉や油分、研磨剤などが表面に残留することがあります。これらの不純物が体内に溶け出すと、アレルギー反応や炎症を引き起こす可能性があります。電解研磨は、これらの不純物をミクロレベルで除去し、金属本来の清浄な状態を露出させることで、安全性を飛躍的に高めます。

3-2微細な凹凸とバリの除去による感染リスクの低減

未処理の金属表面を拡大して見ると、まるで月面のクレーターのように微細な凹凸が存在します。また、加工によって生じた鋭利なバリは、患者様の体内で組織や血管を傷つける可能性があります。これらの凹凸は、細菌やウイルスの温床となり、滅菌後も感染リスクを完全に排除することが難しい要因となります。電解研磨によって、これらの凹凸を滑らかにすることで、洗浄性と滅菌性が大幅に向上します。これにより、血液や組織が器具に付着するのを防ぎ、院内感染のリスクを最小限に抑えることができます。

3-3強固な「不動態皮膜」の形成と強化

ステンレスやチタンは、空気中の酸素と反応して表面に不動態皮膜という非常に薄く安定した酸化被膜を形成します。この皮膜が内部の金属が錆びるのを防ぎ、高い耐食性と生体適合性をもたらします。しかし、機械加工や物理的な研磨によってこの皮膜が破壊されたり、不均一になったりすることがあります。電解研磨は、表面を平滑化する過程で、同時に不動態皮膜を化学的に再構築し、より均一で強固なものにします。

また不動態化処理は、加工で失われた不動態皮膜を酸性の溶液を用いて意図的に形成・補強する処理で、これら両方の処理を適切に行うことで、金属イオンの溶出を確実に防ぎ、生体適合性を最大限に高めることができます。


YouTube動画でも「不動態化処理」を解説していますので、ぜひご覧ください。

※不動態化処理に関する詳しい解説は、『【基礎中の基礎!】不動態化処理とは』でもご覧いただけます。

まとめ

医療器具の表面処理は、単なる見た目の美しさを追求するものではありません。それは、患者様の体内で器具が安全に機能し、医療現場に安心と信頼を届けるための、極めて重要なプロセスです。

電解研磨と不動態化処理は、こうした医療の安全性を支える上で欠かせない技術です。ミクロレベルで不純物を除去し、微細な凹凸を滑らかにすることで、感染リスクを最小限に抑え、耐食性と生体適合性を最大限に高めます。

弊社、株式会社三和鍍金では、創業から70年以上表面処理に携わり、医療器具に求められる高度な安全性と品質にお応えしてきました。

電解研磨や不動態化処理などの表面処理でお困りの際は、ぜひ一度、三和鍍金までお問い合わせください。

執筆者プロフィール

三和鍍金 スタッフ
三和鍍金 スタッフ
金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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