艶消し黒の表面処理3選!塗装・アルマイト・低温黒クロムメッキ
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皆様、こんにちは。
群馬県高崎市にて表面処理を手掛ける、株式会社三和鍍金と申します。
製品に高級感のある「艶消し黒」を施したいものの、黒色の表面処理の種類が多くてどれにするかに迷うことはありませんか?
黒色の表面処理には艶消し黒が得られるものとそうでないものがあります。また見た目だけでなく、耐久性やコスト、素材との相性も重要です。
この記事では、代表的な3つの艶消し黒表面処理を紹介し、皆様の製品に最適な方法を選ぶためのポイントをわかりやすく解説します。
三和鍍金では黒表面処理を含む50種類以上の表面処理を手掛けております。
お見積もりのご相談など、お問い合わせはお気軽にどうぞ!
今回ご紹介する方法以外にも様々な黒色表面処理がございますので、YouTube動画もぜひご覧ください。
目次
艶消し黒の表面処理、代表的な3つの方法とその特徴

黒色の表面処理は数多く存在しますが、実は「艶消し黒」を美しく施せるものは限られています。
例えば、以下のような処理では艶消しの黒にはなりません。
【艶消しにならない黒色表面処理の例】
- 黒クロメート:光沢のある黒が基本で、色ムラも出やすい
- 黒染め:半透明〜グレー寄りで、真っ黒やマット感は出せない
- 酸化発色:干渉色のため、光の当たり方で色調が変化し、「艶消しの黒」とは異なる印象
そこで、この記事では艶消し黒を実現できる代表的な3つの方法をご紹介します。特徴を理解することで、製品の用途や求める性能に合わせた最適な選択が可能になります。
1.【塗装】色の自由度とコストが魅力
最も簡単に黒色を施すことができる表面処理として塗装があげられます。
塗装は好みの色や質感を実現でき、比較的安価に様々な素材に適用できることから、多くのケースで採用されています。特に大量生産品や試作品では、コスト面でのメリットが大きく働きます。
一方で、塗膜は物理的な衝撃に弱く、キズが付いたり剥がれたりしやすいというデメリットがあります。特に、耐摩耗性が求められる部品への使用には注意が必要です。
また、複雑な形状の場合、つきまわり性(塗料の回り込み)が悪く、均一な仕上がりを得るのが難しい場合があります。
※塗装に関する詳しい内容は、「【基礎中の基礎!+α】溶剤塗装について」の記事でご覧いただけます。
2.【黒アルマイト】アルミニウム製品の定番処理
黒アルマイトは、アルミニウム専用の表面処理です。アルミニウムの表面に電気化学的な処理で酸化皮膜を生成させ、その皮膜に黒色の染料を染み込ませることで着色します。
塗装と違い、素材自体を変化させるため、皮膜が剥がれにくいのが特徴で、耐食性・耐摩耗性・絶縁性も向上します。
ただし、アルミニウム以外の素材には適用できず、強い衝撃で皮膜が割れてしまうことがある点には注意が必要です。
※アルマイトに関する詳しい内容は、『【基礎中の基礎!+α】アルマイトについて』の記事でご覧いただけます。
3.【低温黒クロムメッキ】機能性と高級感を両立
低温黒クロムメッキは、電気的処理により金属表面に形成されたクロム皮膜内の微細なクラックや孔に樹脂を浸透させ、クロムと樹脂の複合皮膜を作る比較的新しい表面処理技術です。低温で処理を行うため、熱による素材への影響がほとんどなく、均一な膜厚で複雑な形状にも対応できます。
特に、耐食性、耐摩耗性、低摩擦性、非粘着性(表面への物質の付着しにくさ)といった優れた機能性を持ちながら、深みと高級感のある艶消し黒を表現できる点が大きなメリットです。
ただし、対応できる素材が鉄、ステンレス、銅などの金属に限られる点には注意が必要です。
※低温黒クロムメッキに関する詳しい内容は、『耐摩耗性メッキどれが強い?現場で選ばれる4選』の記事でご覧いただけます。
【比較表】塗装・黒アルマイト・低温黒クロムメッキの特性比較

製品や部品の開発において、最適な表面処理を選択するためには、それぞれの処理が持つ特性を客観的に理解することが重要です。以下の比較表で、3つの黒色表面処理の特性をご覧ください。
【基本特性比較表】
項目 | 塗装 | 黒アルマイト | 低温黒クロムメッキ |
膜厚 | 10〜50μm | 5〜100μm | 1~13μm |
処理温度 | 常温〜200℃ | 約20℃ | 常温 |
対応素材 | 金属・プラスチック・木材など | アルミニウム専用 | 鉄・ステンレス・銅・チタンなど |
耐食性 | ★★★(塗料による) | ★★ | ★★ |
耐摩耗性 | ★ | ★★ | ★★★ |
つきまわり性 ※ | ★★ | ★★ | ★★ |
寸法精度 | ★ | ★★ | ★★★ |
コスト | ★★★ | ★★ | ★★ |
【メリット・デメリット比較表】
処理方法 | メリット | デメリット |
塗装 |
・色や質感の自由度が高い ・コストが安い ・様々な素材に対応可能 ・短納期対応可能 |
・塗膜が剥がれやすい ・耐摩耗性が低い ・つきまわり性が悪い場合がある ・定期的なメンテナンスが必要 |
黒アルマイト |
・耐食性 ・耐摩耗性が向上 ・絶縁性がある ・金属質感を活かした仕上がり |
・アルミニウムにのみ適用 ・皮膜が割れやすい ・合金種類で仕上がりが変わる |
低温黒クロムメッキ |
・熱影響が少ない ・つきまわりが良い ・寸法精度が高い ・高機能 | ・対応できる素材が限られる ・専門的な技術と設備が必要 |
【艶消し黒の色味・質感比較表】
項目 | 塗装 | 黒アルマイト | 低温黒クロムメッキ |
黒の深さ | 最も深い漆黒 | 深い黒色 (金属質感あり) | 深い黒色 (僅かに金属的下地感) |
色調の特徴 | ・純粋な黒色 ・顔料による均一な黒 | ・アルミ質感の黒 ・微細な金属光沢 | ・複合皮膜の独特の黒 ・上品で落ち着いた黒 |
表面質感 | 顔料粒子による 微細な凹凸感 | 電気化学処理による 均一なマット感 | 樹脂複合による 滑らかな艶消し感 |
色の均一性 | 非常に均一 | 均一 | 非常に均一 |
印象 | フラットで深い黒 「真っ黒」な印象 | 金属的な上品な黒 「重厚感」のある印象 | 高級感のある艶消し黒 「洗練された」印象 |
代表的な仕上がり例 | ・マットブラック塗装 ・光学機器の内部 ・カメラボディ | ・PC等の筐体 ・高級スピーカー ・建築用サッシ | ・高級時計ケース ・精密機器部品 ・自動車内装部品 |
【目的別】最適な艶消し黒の表面処理はこれ!

これまでの比較を踏まえ、具体的な製品開発の目的や要件に応じた、黒色表面処理をご紹介します。皆様の製品に最も適した選択肢を見つけるための指針としてご活用ください。
素材で選ぶ場合
- アルミニウム製品の場合 → 黒アルマイトが最適
- 鉄・ステンレス・銅製品で熱影響を避けたい場合 → 低温黒クロムメッキが最適
- 上記以外の素材や制約がない場合 → 塗装が第一候補
機能性で選ぶ場合
- 耐摩耗性・耐食性・寸法精度を最優先する場合 → 低温黒クロムメッキが最適
- 絶縁性が必要な場合 → 黒アルマイトが最適
- 特に高い機能性が不要でコストを抑えたい場合 → 塗装が最適
デザイン性で選ぶ場合
- 高級感のある均一な艶消し黒を求める場合 → 低温黒クロムメッキが最適
- 特定の色や質感を求める場合 → 塗装が最適
- 金属の質感を活かした黒色を求める場合 → 黒アルマイトが最適
また、試作で実際の仕上がりや性能を確認することもお勧めです。
弊社、株式会社三和鍍金では、試作のご相談も承っておりますので、詳しい条件をお知らせいただければ協議させていただきます。
まとめ:それぞれの特徴を理解し、最適な黒色表面処理を選ぼう
この記事では、艶消し黒の表面処理として代表的な「塗装」「黒アルマイト」「低温黒クロムメッキ」の3つの方法について、その特徴、比較表、目的別の選び方を詳しく解説しました。
それぞれの処理には、コスト、機能性、対応素材、デザイン性において異なる特性があります。製品の用途、求められる性能、予算、そしてデザインコンセプトに合わせて、最適な黒色表面処理を選択することが、製品の品質向上と競争力強化につながります。
どの処理が最適か判断に迷う場合は、専門家への相談も有効な手段です。この記事が、皆様の製品開発にお役に立てば幸いです。
弊社、株式会社三和鍍金は、創業から70年以上表面処理に携わり、製品や部品の品質向上に貢献してまいりました。
低温黒クロムメッキをはじめとする耐摩耗性表面処理のご相談に加え、その他表面処理や分析・試験にも対応しております。ご検討の際には、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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