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columnメッキライブラリ

2023.08.26

【パイオナイト処理とは?】詳しく解説致します

※2023年9月22日に加筆修正致しました。

こんにちは。

群馬県高崎市にて各種表面処理をおこなっております、(株)三和鍍金と申します。

今回は、国内でも対応できる企業の少ない特殊な表面処理について触れていきます。

タイトルにございます「パイオナイト処理」という言葉を聞いたことはございますでしょうか。

表面処理の仲間ではありますが、技術が特殊すぎるためパイオナイト処理できる企業が限られています。

今回は、特殊なパイオナイト処理がどんな表面処理なのか、表面処理の種類についての紹介も交えながら徹底解説していきます。

弊社では50種類以上の表面処理の取り扱いがございますのでお気軽にお問合せ下さい

お見積りのご相談など、お問い合わせはお気軽にどうぞ!

金属の表面処理の種類はどのように分けられる?

パイオナイト処理の解説の前に、皆さんは金属の表面処理についてどこまでご存知ですか?

実は金属の表面処理には様々な種類があります。

  • ・めっき
  • ・塗装
  • ・アルマイト(陽極酸化処理)
  • ・溶射
  • ・表面硬化
  • ・表面熱処理
  • ・エッチング
  • ・化成処理
  • ・清浄・研磨・ショットピーニング

金属の表面処理は一般的にこれだけの種類に分けられます。

ここからさらに素材表面に成膜させる表面処理として、

  • ・めっき
  • ・塗装
  • ・アルマイト(陽極酸化処理)
  • ・溶射
  • ・化成処理

上記の5種類を分けることができます。

そして、金属の素材自体を硬化させたり腐食させたりする表面処理として、 

  • ・表面硬化
  • ・表面熱処理
  • ・エッチング
  • ・洗浄、研磨、ショットピーニング

という4種類に分けられます。

では、今回解説させていただく「パイオナイト処理」はどの種類に当てはまるのでしょう。

答えは「表面硬化」です。

パイオナイト処理が表面処理のどの種類に該当するのか分かったところで、パイオナイト処理について深掘りしていきましょう。

パイオナイト処理とは?

パイオナイト処理とは、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS316など)の表面を硬化させることができて、

さらに耐食性も維持できるということで表面処理にとって画期的な技術です。

しかし、これだけを説明されても何がすごいのかわからない方も多いかもしれません。

もう少し分かりやすく噛み砕いていきましょう。

パイオナイト処理をはじめ、表面処理には様々な方法があります。中には、もちろん自社の設備で対応できない場合もございますが、独自のネットワークによって迅速な対応を実現しています。どんな表面処理も、まずはお気軽にご相談ください。

パイオナイト処理はどのような時に使われるのか

パイオナイト処理によって表面処理されるオーステナイト系ステンレス鋼(SUS316など)という金属は、耐食性・延性・靭性にとても優れています。

それだけではなく冷間加工性や溶接性という点でも優秀で、

皆さんの身の回りの家庭用品や自動車部品、住宅の建築用品にも使用されています。

皆さんの普段使用しているスプーンやフォークなども、

オーステナイト系ステンレス鋼から製造されているかもしれません。

使用しやすく様々なところで活躍しているオーステナイト系ステンレス鋼ですが、

実は焼入れによる硬さの向上を純粋には見込めないという欠点を持っています。

実際には、塑性加工をすることで加工硬化という強度を上げる方法はあるのですが、

そうすると「加工誘起マルテンサイト」というマルテンサイト系ステンレス鋼(SUS430など)に近い性質に変化してしまいます。

マルテンサイト系ステンレス鋼は、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて耐食性が低く、

強い磁性を持つ要因も持っているので、こうなってしまうとオーステナイト系ステンレス鋼の良さが活かせません。

そこで「パイオナイト処理」の出番です。

パイオナイト処理によって、表面硬化と耐食性の良いとこどりしたオーステナイト系ステンレス鋼を生み出すことができ、

ステンレスの美しさを残しながらも高い耐久性が求められる場所に使用できるようになりました。

メリットとデメリット

メリットとしては、先ほど挙げたようにオーステナイト系ステンレス鋼の耐食性を維持しながら

表面硬化による強度向上が見込めるようになったという点です。

デメリットとしては、現段階で特許を取得している企業を中心とする対応力だけでは、

パイオナイト処理に対応できる企業が少ないため、

急激に需要が高まった場合に需要と供給のバランスが崩壊してしまう可能性が高いという点です。

パイオナイト処理の工程について

パイオナイト処理の特徴やメリット、デメリットについて理解できてきたところで、気になる工程を見ていきましょう。

パイオナイト処理の原理を簡単に説明すると「ガス活性化処理」と「低温炭素固溶拡散処理」を応用した表面処理です。

通常の場合、金属の表面には酸化皮膜(不動態皮膜)という錆で覆われています。

その酸化皮膜をフッ化膜へ置換し、最終的にフッ化膜が還元、除去されて低温状況下で均一な浸炭層が形成されるといった原理になっています。

もう少し分かりやすいように図を用意しているので、ご覧ください。

類似している表面処理との比較

パイオナイト処理がどのような表面処理なのか理解できたのではないでしょうか。

ここからは、おまけとしてパイオナイト処理と近い他の表面硬化方法を紹介します。

浸炭

浸炭は、金属の表面を高炭素の環境下で加熱し、表面に炭素を浸透させる方法を指しており、

この方法によって表面が硬化し、耐摩耗性や耐疲労性の向上が可能です。

内部の柔軟性は維持されるため、強度と柔軟性を兼ね備えた金属を生み出すことができるのが特長です。

具体的な浸炭の流れは、まず金属を高炭素の材料(例:炭化物や炭素豊富なガス)の中に入れます。

次に、数時間から数十時間、800°C以上の温度で加熱します。

この過程で、炭素を金属の表面に浸透させることが可能です。

冷却後に表面は硬質になり、内部はそのままの柔軟性を維持し続けます。

浸炭技術は、ギアや歯車、ベアリングなどの部品に多く用いられています。

これらの部品は耐摩耗性や強度が求められるため、浸炭が採用されることが多いです。  

窒化処理

窒化処理とは、金属の表面に窒素を取り込むことで表面を硬化させる方法を指しており、

この方法によって、金属の表面が強化されることで耐摩耗性や耐熱性を飛躍的に向上させることが可能です。

金属中心部の特性は変わらず、硬い表面と柔らかい内部を持つ金属を生み出すことができるメリットがあります。

具体的な窒化処理の方法としては、金属を高温の窒素ガス中で加熱することで、表面に窒素が浸透します。

例えば、550°C以上で数時間から数十時間加熱することで、金属の表面に窒素を取り込むことが可能です。

冷却後の金属は、表面が硬化し、内部は元の柔軟性を維持します。

窒化処理は、自動車部品や工具、エンジンの部品などに広く使用されています。

これらの製品では耐熱性や耐摩耗性が非常に重要であるため、窒化処理が採用されるケースが増えてきました。

高周波焼入れ

高周波焼入れは、金属の表面を高周波の電流を用いて加熱し、その後急速に冷却することで表面のみを硬化させる方法を指します。

具体的な高周波焼入れの流れとしては、まず金属の部分や全体を高周波の電流にあてます。

これにより、特定の部分の温度が数秒で数百℃〜数千℃に上昇するので、

加熱後に水や油で急速冷却することで、内部の構造は変わらない柔軟性を維持した状態で表面のみを硬化させることが可能です。

高周波焼入れ技術は、工具、ナイフ、ギアや歯車などの部品に使用されています。

これらは表面の耐摩耗性や強度が特に重視されるため、高周波焼入れが最適です。

硫化処理

硫化処理は、金属の表面に硫黄を反応させて硫化膜を形成する方法を指し、

この硫化膜によって表面が硬化することで、耐摩耗性や耐食性が向上します。

この硬い膜の下には、金属の本来の柔軟性が維持されるため、硬さと柔軟性を両立することが可能です。

具体的な硫化処理の手順としては、まず金属を硫黄化合物に浸します。

続いて、一定の温度範囲内で加熱し、硫黄と金属が反応して硫化膜を形成します。

この処理後、表面は耐摩耗性や耐腐食性を持つ硬質の膜となり、内部はそのままの柔軟性を維持することが可能です。

硫化処理は、工業部品や高精度な部品の製造において、その特性が必要とされる場面で使用されることが多いです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は「パイオナイト処理」についてお話ししてきました。

パイオナイト処理によって、困難なオーステナイト系ステンレス鋼の強度向上と耐食性の維持ができるという大事な部分は、お分かりいただけたと思います。

希望している用途で使用したいから、素材そのものを最適な特性へと変化させることができるのが表面処理です。

表面処理にも様々な種類があり、金属によって相性も存在しています。

それぞれの表面処理がどのような方法で、どのようなメリットやデメリットがあるのか理解しておくことで、

金属製品の表面処理方法を選定する際に、大きな力を発揮します。

結果として金属製品の機能を最大限に引き出すことが可能になるので、大きな付加価値を提供することに繋がるでしょう。

弊社、株式会社三和鍍金では、創業から70年以上表面処理に携わってきたことにより

培うことのできた技術とノウハウで、満足度の高い提案をお客様に提供しております。

表面処理に迷った際には、お見積もりのご相談など、お気軽にお問い合わせください。

圧倒的な提案力で、大きな付加価値を提供するお手伝いをさせていただきます。

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三和鍍金 スタッフ
三和鍍金 スタッフ
金属表面処理の様々な疑問・基礎知識や、創業から70年以上培ってきたノウハウについて「誰にでもわかりやすく」をモットーに執筆しています。
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