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columnメッキライブラリ

2022.08.09

プラスチックメッキのメッキグレード【あなたの知りたいことがここに!?】

皆さん、こんにちは。

群馬県高崎市で表面処理業をしております(株)三和鍍金です。

本コラムは営業部の古島が担当いたします。

プラスチックにメッキ?と思う方もいらっしゃると思いますが、電気自動車などの普及によりプラスチックメッキの需要は年々増加しているのです。

今回はそんなプラスチックメッキについてメッキグレードやおすすめの成形方法等を紹介していきます。

では行ってみましょう!

※プラスチックメッキについての詳細はこちらをご覧ください。

※プラスチックメッキは電気自動車にも使用されています。

メッキグレード

まず初めに、プラスチックにはABSやPC、PEEK等の材質がありますが、さらにメッキグレードによって細分化されているのです。

その中でも、メッキをすることが多いABS樹脂のメッキグレードについて見ていきましょう!

・3001M

 プラスチックメッキではエッチングという工程で、

  ABS樹脂のBの部分であるブタジエン (Butadiene)という物質を溶かします。

 その際の均一性が高いため、メッキをする上での密着性が非常に良いのが3001Mの強みです。

※エッチングの詳細に関してはこちらをご覧ください。

・AP8

 AP8は耐熱性に優れていることで有名です。

 ABS樹脂自体は自動車関係で使用されることが多いですが、

 AP8は電気自動車等の外側よりも内側で使用されるのが特長です。 

 それは、車外よりも車内の方が熱くなりやすいからという理由だそうです。

 ・トヨラック

 工業用品から家庭用品まで幅広い分野で使用されており、

 軽く、耐久性もよく、美観もいいそんな優秀なABS樹脂がトヨラックなのです。

 また、常温では変形しにくいですが、加熱すると軟化して成形しやすくなり、

 冷やすと再び固くなる熱可塑性プラスチックであり、加工性にも優れています

 ABSでメッキグレードの指定がない場合には、このトヨラックをおすすめいたします。

おすすめの成形方法

お客様のご質問で「プラスチックメッキをするにあたって、どのような成形方法が適切ですか?」というご相談をいただくことがあります。

プラスチックを成形する方法が多く存在しますので、困ってしまいますよね。

ですので、今回は私のオススメを3つご紹介していきます。

1.射出成型

射出成型とは、プラスチック(樹脂)の材料を加熱して溶かし、金型に送り込んだ後、冷やすことで目的とする成形を行います。

皆さんの身の回りにあるプラスチック製品のほとんどがこの射出成型で作られたものです。

射出成型は金型の製作が必須ですが、金額が高いのがネックとなります。

しかし、成形時間がとても速く、金型を一度製作してしまえばあとは材料費のみとなるので、生産量が多ければ多いほど単価を安くすることができます

大量生産をしたい場合にオススメです。

また、金型を使用する射出成形で加工したものは、公差調整等の後加工の必要がなく、

同じ製品を成形した際の再現性が高いのが魅力的です。

2.切削加工

成形をする際に金属・木材以外にプラスチック(樹脂)を切削することもあります。

金属・木材・プラスチック(樹脂)の中で最も切削が難しいのがプラスチック(樹脂)となります。

全く同じものを作るのが難しいのです。

射出成型の場合、金型の作成が必須となりますが、切削加工の場合は金型の製作費用がかからないため、小ロットからでもコストを上げずに対応できるのが切削加工の利点となります。

そのため、小ロットを希望の方にオススメです。

3.3Dプリンター

ABS樹脂という言葉はプラスチック成形の分野でしかあまり聞きませんでした。

しかし、近年3Dプリンターの製造数、種類の増加が年々増加傾向にあることにより、認知度が以前の数倍となり、少しずつ身近な存在になってきているのです。

一昔前、低価格帯の3Dプリンターでのプラスチック成形は詰まりやミスプリントが多かったです。

そのため、高価格な3Dプリンターでないと正確な成形ができないのが3Dプリンターでの成形の難点となっていました。

しかし、現在では3Dプリンターでの成形需要がどんどん高まってきたことにより、3Dプリンターの性能は急速に向上しました。

これにより、低価格帯の3Dプリンターでも正確な成形ができるようになりました。

個人の方などの様々な種類の製品を単品で成形する方は金額が他と比べて安いためオススメです。

※3Dプリンターはこのようにして成形を行っています。

メッキをする場合、法人等の大量生産をされる方は射出成型個人の方や小ロットの生産を希望の方は切削加工がおすすめです。

3Dプリンターで成形をすると、表面に巣穴ができてしまい、その製品にメッキをすると綺麗にならないまたはメッキがつかない可能性がございます。

しかし、弊社では3Dプリンターでの成形品等の試作トライ等のご相談も可能でございますので、お気軽にお問合せください。

トライ可能なサイズ

ここまでプラスチックメッキのメッキグレードと成形方法について見てきましたが、ではメッキができるサイズはどのくらいの大きさまで処理可能なのでしょうか。

弊社のプラスチックメッキの協力工場様では、おおよそナンバープレートくらいのサイズを最大処理サイズとしています。

日本の普通車用ナンバープレートのサイズは横330×縦165mmですので、大体このくらいのサイズ以下でしたら問題なく処理できます。

実績のある材質

弊社ではこれまで様々な材質にプラスチックメッキを試みてきました。

その実績を踏まえて、どの材質ならメッキができるのか見ていきましょう。

・ABS

・PC-ABS(二色成形)

・PC-ABSアロイ

上記の3つに関しては、現在でも弊社協力工場様で扱っております。

ですので、メッキグレードにもよりますが基本的には問題なくプラスチックメッキ処理が可能です。

・PEEK

・PSF

・PA

上記の材質は実績がありますが、エッチング工程で溶けないことによる密着性不良や逆に過度に溶けすぎてしまい変形すること等により、うまくメッキがつかなかったものです。

また、POM、PMMAに関しても実績はありませんが今までの経験からうまくいかないのではないかとみられています。

しかし、上記以外の材質はもちろんのこと、同じ材質でもメッキグレードの違いによりメッキがうまくつく可能性がありますので、まずはお気軽に弊社の方にお問い合わせ頂けますと幸いです。

まとめ

今回はプラスチック(樹脂)メッキについての色々なことをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。

私は、同じABSという材質でもメッキグレードによってここまで違うのかと度肝を抜かれました。

今回ご紹介したメッキグレード・成形・材質等以外にもわからないことがありましたら、お気軽にお問い合わせください。

また、プラスチックメッキをもっと知りたいという方は下記をご覧ください。

余談

車載等の用途でプラスチック加工品を考える際に気になるのが耐久性ですよね。

手のひらサイズの製品を以下の耐久性を確認する信頼性試験にかけることが出来ます。

※製品が手のひらサイズより大きい場合は弊社に一度ご相談ください。

1.サーマル試験

サーマル試験とは高温(80℃)と低温(-30℃)30分の常温のインターバルをはさみ、交互に繰り返すことによって、温度の変化による膨張と収縮に耐えられるのかを試験します。

2.ヒートショック試験

ヒートショック試験もサーマル試験と同様に高温(80℃)と低温(-30℃)を交互に繰り返すことによって、温度の変化による膨張と収縮に耐えられるのかを試験します。

しかし、一番の違いはサーマル試験では30分のインターバルをはさんでいましたが、ヒートショック試験では高温からすぐに低温、そして高温と間に常温で一休憩入れない事にあります。

ですので、ヒートショック試験の方がより厳しい試験となります。

上記の試験も弊社協力工場様にて行っておりますので、「量産を考えているけど、耐久性が心配」という方はぜひ弊社にご相談いただければ、弊社一丸となり対応させていただきます。

PROFILE

古島 義樹
古島 義樹
ソフトウェア開発会社にプログラマーとして在籍後、株式会社三和鍍金に入社。現場で経験を積み、現在は営業職に従事している。

表面処理については継続的に勉強中であり、0から学びたい方や調べてみたけどよくわからない方に寄り添った内容を心がけている。

ユーザーの要望や需要に沿ったソフトウェアの開発経験を活かし、メッキライブラリにおいてもユーザーニーズを満たす記事を目指す。
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