【似てる?】溶射とめっきの違い
こんにちは。
群馬県高崎市にて表面処理をおこなっております、(株)三和鍍金と申します。
本コラムは事業統括部の柳沢が解説いたします。
よろしくお願い致します。
今回は溶射とめっきの違いについて解説していきたいと思います。
皆さん、溶射ってご存知でしょうか。
私もつい最近まで聞いたことがありませんでしたが、その仕様はめっきに似ている部分も多いと言えます。
いろんな選択肢がある表面処理の中で、今回は「溶射」と「めっき」に注目してみましょう。
弊社ではYouTubeにおいて様々なめっきの情報を発信しております。
めっきや塗装の全自動大型ラインを映した映像等もございますので、是非ご覧ください。
目次
溶射ってなに?
溶射とは溶かした金属やセラミックスなどの材料を製品に吹きつけることで皮膜を形成させる表面処理技術です。
「溶」かした材料(溶射材と呼ばれます)を噴「射」して皮膜をつくるので「溶射」というわけですね。
吹き付ける溶射材は金属・合金・サーメット・セラミックスなど様々ですので、その中から適切なものを選ぶことで
耐摩耗性・絶縁性・電通性・耐食性・断熱・美観などなど数多くの機能を得ることが可能です。
膜厚は様々ですが、最小25μほどから最大1000μ(1mm)ほどとなります。
※厚膜は不具合が起きやすいため、現実的には500μくらいが目安となります
溶射においては溶射材を溶かすための熱源が必要になりますが、
この熱源の種類別にいくつかの手法に分類されています。

ガス式溶射
フレーム溶射(溶線式、溶棒式、粉末式)と高速フレーム溶射に細分化されます。
フレームというのは酸素と燃焼ガスを混ぜた燃焼炎のことで、
高速フレーム溶射については細長い噴射ノズルによってフレームを絞ることでより高速高圧に溶射材をあてることができます。
電気式溶射
アーク溶射とプラズマ溶射に細分化されます。
どちらもアーク放電の原理を用いて(つまるところ電気の力で)溶射をおこないます。
ガス式溶射に比べて全体的に溶射能力が高く、また溶射材がガス式より高温で溶かされているため、密着性に優れていると言われています。
コールドスプレー
上二つの方法はどちらも溶射材を溶かし、それを製品にあてることで皮膜を形成させる方法ですが、
このコールドスプレー法は溶射材が溶けない温度の超音速ガスを用いて溶射をおこないます。
要は超音速による高圧のみを用いて溶射をおこなうわけですね。
熱を用いないため、熱による製品の特性変化などを最小限に抑えることができます。
メリットとデメリット
溶射の全体的なメリットとしては以下の通りです。
・かなり広範囲の材質に対して処理可能
・製品の部分加工が比較的容易
・製品サイズに制約があまりなく、現地での施工も可能
・溶射材は機能によって種々選択できる
・溶射+仕上げ加工によって剥離をしなくても補修が可能
・溶射+仕上げ加工によって様々な表面性状(鏡面仕上げなど)に対応できる
対して、デメリットとしては以下のような点が挙げられます。
・厚膜成形が難しい(技術的に可能ではある)
・処理コストがかかるため量産には向かない
めっきってなに?
対して、めっきとはどういった技術なのでしょうか?
めっきとは電気的及び化学的な作用によって製品表面に金属の皮膜を析出させる表面処理技術です。
その用途は多岐に渡り、自動車・航空・医療・食品・電子機器など非常に多くの業界で採用されています。
大別して電気を使うめっき(電気めっき)と電気を必要としないめっき(無電解めっき)の2種類が存在します。
用途と目的によって使用するめっきを選ぶのが通例です。
膜厚はめっき種にもよりますが、最小0.1μくらいから200μくらいとなります。
詳しくはこちらのコラムをご参照ください。

メリットとデメリット
めっきのメリットとしては以下の通りです。
・皮膜が薄いため、経済的かつめっき材料が希少金属の場合は資源の節約になる
・金属だけでなく、ガラスやプラスチックなどにもめっき可能
・安価かつ処理能力的にも試作はもちろん、量産対応が得意
・機能性や美観、耐食性を付与できる
対しましてデメリットとしては以下のような点が挙げられます。
・形状や数量によるが、部分加工が少し難しい
・基本的に補修には剥離が必要(剥離+再めっき)
・めっき槽に入らないサイズは処理不可
溶射とめっきの近似点
さて、では双方の処理においてどんな点が共通であると言えそうか、考えてみましょう。
まず、初歩的な部分ですが製品上に皮膜をつける点は似ています。
ただし、めっきが金属の皮膜しかつけることができない反面、溶射は金属はもちろん金属以外も溶射材として塗布することができます。
これは皮膜の形成メカニズムが異なるために生まれる違いですね。
また、処理可能な材質について、めっきも溶射も幅広く対応可能です。
さらにどちらもミクロンの世界である(薄膜である)というのも共通していますね。
処理の目的もかなり似ていて、めっきも溶射も耐食性・導電性・耐摩耗性・耐熱性などなど様々な性能付与を目的として処理がなされます。
溶射とめっきの相違点
一方で、それぞれ異なる点も多く存在します。
共通点のパラグラフでどちらも薄膜である点が似ているとしましたが、ミクロンの中で比べるとめっきの方が全体的に薄膜となります。
めっきにおける500μ等、三桁の膜厚はかなり特殊な膜厚になりますので、通常レベルの膜厚で比較するとその違いは歴然です。
また、部分加工について溶射は容易ですが、めっきはあまり得意ではないというのが正直なところです。
処理可能サイズについて、溶射は制限がほとんどありませんが、めっきはめっき槽の大きさに応じて制限がかかります。
再処理及び補修について、めっきは剥離が必要です。溶射は必要ありません。
一部剥離には生地溶解などのリスクが伴いますので、剥離が必要ないというのはリスク低減につながります。
さらに、試作~量産にあたって溶射は高コストですが、めっきは低コストで対応可能です。
そもそも溶射の場合は、ロットによって量産対応が難しい場合も多くあります。
まとめ
いかがだったでしょうか。
溶射とめっきの違いについて少しでもお分かりいただけたら幸いです。
弊社では溶射・めっきを取り扱っております。
塗装や研磨など、その他にも50種を超える表面処理を扱っておりますので、お困りでしたら是非一度ご相談ください。
それではまた次回!
PROFILE

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新卒として入社後、現場での業務経験を活かし現在は営業として活動しながらコラムを執筆。塾講師・家庭教師の経歴から、「誰よりもわかりやすい解説」を志している。
また、多数の人気コラムを生み出すだけでなく、YouTubeの元編集者・現プレスリリース執筆者。コラム・YouTube・広告等のプロモーションを手掛けた本HPは流入ユーザー数前年比1,150%アップという偉業を達成した。
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